レギュラー争いと選手の成長
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プロ野球
プロ野球では、同じポジションに複数の選手がいる。チームの各ポジションで選手を競わせて選手を育てるという首脳陣もコメントも聞かれるが、実際にはどういう物なのか? 元西武ライオンズの石毛宏典氏と、西武ライオンズコーチだった日野茂氏に話を聞いた。
レギュラーと控え
選手はキャンプ、オープン戦でそれぞれのポジションでプレーをアピールし、開幕のレギュラーを目指す。そして基本的にはレギュラーと控えの役割が決まり、レギュラーは結果を残し続ける事、試合に出場し続ける事が求められる。そして控え選手は、レギュラー選手が不調になったり故障をした時に出場したり、守備固めなど特徴を活かせる場面で試合に出場をする。
基本的に首脳陣は、キャンプ、オープン戦で、この1年間はこの選手でいく、という事を決める。シーズンが始まると、なかなか結果が出せず、また控え選手が結果を残してレギュラーを奪う事もあるが、基本的に監督の頭の中では8人のレギュラーの名前が固定されている。
石毛氏は、「レギュラーが決まると、控え選手も含め役割を理解するようになり、チームが安定する」と話す。西武の黄金時代にように、レギュラーや打順が固定されると、選手は相手との戦いに目を向けることができる。メンバーが固定されていないと、例えば試合で2打席打てないと、「次打てなかったら交代だ」と考えてしまうようで、ベンチの方を見ながらのプレーとなってしまう。そのため、その打席では無茶な球をスイングしてみたりと、落ち着いてプレーはできないという。
きちんと対戦相手と戦うためにも、レギュラーは交代されるという心配を消して、落ち着いて集中させる必要もあるのだ。
控え選手の生き残り方
石毛氏は入団以来、ショートやサードのレギュラーとして出場し続けた選手だが、石毛氏にポジションを奪われる怖さはなかったかと聞くと、「まったくなかった」と話した。ショートからサードに転向した時も、足の故障と、サードを守っていた秋山選手が外野でのプレーを希望していたからで、ポジションを奪われるという事は考えなかった。
逆に日野氏は、現役時代は内野の控え選手の役割だった。しかしその中で、「あいつよりは守備はうまくなろう」と自分の特徴を磨く事で、プロ野球の生き残りを考えたという。
石毛氏は話す。「ソフトバンクのキャンプでブルペンを見ると、若い選手がみんな似たようなフォームですごい球を投げている。確かに凄い球を投げるけど、それでバンデンハークを越えるストレートを投げられるのか、千賀を越えるフォークを投げられるのか、武田を越えるカーブを投げられるのか、それを考えていない。」
一軍でプレーさえすれば、例え控えだったとしても、与えられた役割で仕事ができれば5000万円くらいの年俸にはなる。だけど、一軍でプレーしなければ年俸は上がらず、続々と入ってくる若手に越されていくだけである。石毛氏は「飯を食うところなんだから、チーム事情を自分で考えて、どうすれば1軍でプレーできるかを考えるべき」という。
投手であれば、サイドスローなどで必ず左バッターを抑えるようにする、野手であれば、足や守備は誰にも負けないようにするなど、自分で生き残り方を考えなければいけない。
運の要素も
レギュラーの話に戻る。石毛氏がサードにコンバートされるとき、その後にショートを守ったのは田辺徳雄選手だった。この時、西武でコーチをしていた日野氏は「この時はショートに選手がいなかった。田辺はうまくなかったけど、育てようと思った」という。
「守備についてはそれほどうまくない、そして棒(打撃)がいいかというとそうでもない。でもなんか独特な打撃を持っていた」と日野氏は話す。田辺選手についてはそうして2軍で鍛えられて、レギュラーメンバーとなっていった。石毛氏がコンバートをした、その時に他の有望で、良い年齢の選手がいなかった、このタイミングで、田辺氏はレギュラーになることができた。
そこにも役割が
しかしこの時、西武には藤野正剛という選手がいた。藤野選手は内野を守り、打撃ではイースタンリーグで首位打者を獲得するなど、既に活躍をしていた。しかし藤野選手が1軍に昇格するとなかなか活躍ができない選手だった。
日野氏は「こういう役割をする選手も必要だった。田辺にとって藤野は乗り越える人だった」と話し、ファームで藤野選手がいたからこそ、田辺選手は成長したのだという。
現在、プロ野球でレギュラーとして出場している選手は、このように実力、人の縁、タイミングなどが重なって出場をしている選手なのだ。
(Professional baseball view 編集部)
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