石毛宏典氏が2016年シーズンを振り返る:セリーグ編
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プロ野球
2016年のシーズンについて、元西武ライオンズの石毛宏典氏に振り返ってもらった。今日はセリーグ編。
セリーグの成績
セリーグは5月頃までは、大きく沈んだDeNA以外の5チームが接戦を見せ、巨人も力を見せていた。しかし6月中旬から広島が連勝で一気に突き放すと、7月、8月にどこも追いかけるチームが存在せず一気に駆け抜けた。貯金37を重ねたのに対し、2位の巨人はわずか貯金2と圧倒したと言って良い。
一方、巨人は追い上げる勢いもなく、逆に5月から一気に上昇をしてきたDeNAと2位争いを繰り広げ、それはシーズン終盤へと続いた。DeNAは序盤の出遅れが痛かったものの初のCS出場を決めた。Bクラスの阪神、東京ヤクルト、中日は7月中旬にそろって失速し、その後、8月末にやや失速したDeNAとCS出場争いをしたものの、最後は勢いで差をつけられた。
セリーグの主な打撃成績と投手成績をまとめた。
石毛氏はまず広島カープの優勝について、黒田投手と新井選手の名前を挙げた。黒田投手、新井選手の野球にひたむきに取り組む姿勢が、若い野村投手や、田中、菊地、丸の1,2,3番を刺激した。4番が固定しない珍しい形だったものの、それぞれの役割を果たしたと話した。
また緒方監督については采配の特徴としては、自由奔放なスタイルに見えると話す。選手の自主性を重んじ、選手のやる気を引き出した。こちらもパリーグの栗山監督と同じく、若い選手のやる気の出し方を心得た形だったかもしれない、と石毛氏は感想を話した。
ただし、日本シリーズで両監督の差が見えたという。栗山監督はここぞという場面で自分の想い通りの選手を起用し、容赦なくカードを切っていく。第5戦では先発させた加藤貴之投手を2回1アウトで見切りを付けてメンドーサに交代させた。また第6戦は2回に2失点をしたものの3回に三者凡退で立ち直りを見せていた増井投手に対し、1アウト2,3塁のチャンスだったとはいえ、悩みに悩んだ末、一度、バッターボックスに向かった増井を呼び止めて代打・矢野を送った。増井投手に悔しさは残ったかもしれないが、ここぞという勝負に徹底的に手を打ち、選手も従った。
一方、緒方監督は日本シリーズも普段と変わらぬ采配、継投を見せた。基本的にコーチが提案するオーダーで試合に臨む。しかし日本シリーズでは結果的には上手くいったのかもしれないが、菊池選手はベンチの意図は送りバントの場面でバスターをしたり、丸選手はベンチの意図は打てのところでバントをしたりし、肝心なところでベンチと選手の意図するものの違いが出たのではないかと分析する。これは来シーズンへの課題となる。
見えなかった、金本監督、井端コーチ
石毛氏は当初、金本監督が選手を徹底的に鍛え上げ、激しい闘いを見せて選手を引っ張っていくと考えていた。しかし阪神の戦い方を見ると、超変革ということで確かに高山選手や北條選手などの若手が活躍を見せたものの、戦い方はチグハグに見えたという。また巨人も高橋監督を支えるコーチとして井端コーチが指導力を発揮するのではないかと予想していたが、井端コーチの姿もあまり見られなかった。逆にDeNAのラミちゃんは良くやったんじゃない、と話した。
石毛氏の師であった広岡達郎氏は、「1軍でも育てる」ことをしていたという。レギュラーでバリバリ活躍する選手にも、徹底的に技術の指導を自らしていた。石毛氏は監督=技術を教える人、だと話す。選手のモチベーションを挙げ、器用し、作戦をたて、継投をしていくのも仕事だが、一人一人をさらに1軍で成長させることができるかどうかが、常勝チームを作るカギなのかもしれない。
これは今年ダントツで優勝した広島にも言える事だろう。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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