小豆島と小豆島高校と甲子園
公開日:
:
高校野球
小豆島高校がセンバツ大会に出場、1-2で惜しくも敗れ甲子園1勝はならなかったが、落ち着いた戦いぶりを見せた。小豆島高校に今の高校野球の立ち位置を見てみる。
選手宣誓
小豆島高校の樋本主将が行った選手宣誓には、これからの日本が示されていた。まず選手宣誓の全文を見てみる。
「宣誓 今から92年前、第1回全国選抜中等学校野球大会が開催されました。その翌年に創部されたぼくの野球部は、来年の春、高校の統合に伴い、新しく生まれ変わります。当たり前にあった景色がなくなる、その重みをぼくたちは忘れたくありません。当たり前にある日常のありがたさを胸に、ぼくたちはグラウンドに立ちます。そして、支えて下さる方々を笑顔にできるよう、気迫を前面に出し、全身全霊でプレーすることを誓います。」
2011年のセンバツから、いやその前の阪神淡路大震災から触れられてきた震災に対する内容は、あえて含まなかったという。そして触れられたのは、伝統ある学校や野球部が統合によって変わっていく姿だった。東日本大震災の復興はまだ途中だが、日本は人口減少で市区町村や学校が減っていくという、これまで膨らみつづけてきた国から、縮小していく国へと新たな段階に入っている。それを表現した宣誓だった。
高校野球の立ち位置
小豆島高校の初戦に当たり、小豆島から約6000人の応援団が甲子園のアルプススタンドに訪れた。船をチャーターし島民の多くが応援に来てくれたが、応援の練習、夜間の移動、そして甲子園と、多くの人が日常とは違う初めての体験を楽しんでいたように感じた。
地方では高齢化が進み、少子化によって子どもも少なくなった。子どもや若者は、遊んでいても勉強をしていても、周りに活力を与える存在だが、その子どもが少なくなり地方の街は、ゆっくりと流れる時間の中で日常を繰り返している。
樋本選手は日常のありがたさを伝えたが、日常を繰り返していくと変わらない停滞した雰囲気に、その有難さを気付けなくなる。今回は日常の中にある小豆島の人たちを、小豆島高校が非日常へと連れてきてくれた。それによって人々は、日常のすばらしさをあらためて感じることができるだろう。
少なくなった地方の街の子どもたちの夢に乗り、希望を見せてくれた甲子園だった。
プロを目指すために強豪高校に進み、何度か甲子園に出場して夢を勝ち取る事も素晴らしい事だと思うが、改めて高校野球のすばらしさを感じることができた今回の小豆島高校の甲子園だった。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
関連記事
-
-
怪物達が輝く甲子園であり続けて!
昨夏の覇者・前橋育英の高橋光成投手が、昨春の優勝チーム・浦和学院の小島和哉投手が、準優勝・済美高校
-
-
意外性を見せたセンバツ出場校の選考
センバツ高校野球大会の出場32校が発表された。選出には意外と感じられる部分も見られた。 意外な選考
-
-
難航しそうな今年のセンバツ高校野球出場校の選考
センバツ出場校の発表が明日、1月29日に迫った。例年、選考が難航する地区があるが、今年は特に難航しそ
-
-
高校球児が増加し初の17万人越え、その背景は?
高校野球連盟は2014年5月末現在の部員数を発表し、昨年より3224人多い170,312人となった
-
-
高校野球は練習方法を変えれば、まだまだ上手くなる(2)
ある高校の練習の指導に訪れた日野茂氏は、その練習方法とある出来事を経験して「高校野球は練習方法を工夫
-
-
東海大相模・小笠原慎之介投手を元プロ野球のスカウトが評価する
今日は今年の高校生の左腕投手でNO1の声もあがる東海大相模・小笠原慎之介投手を、元西武スカウトの日
-
-
【センバツ注目選手】遊撃手編~その3~ 木更津総合・檜村篤史選手を元プロスカウトが評価する
センバツ出場選手の評価シリーズ、今日は遊撃手編の最後として、木更津総合高校の檜村篤史選手を見てみた
-
-
アマチュア野球の注目スラッガー選手を元西武、阪神スカウトが評価する
これぞプロという迫力ある打球を打つ選手は、いつの時代もファンの心をつかむ。プロ野球でも筒香嘉智選手、
-
-
今年のドラフトの目玉は高校生左腕、履正社・寺島成輝投手を元プロスカウトが評価
今年ドラフト会議では、創価大の田中正義投手が一身に注目を浴びている。10年に一人、20年に一人と評
-
-
高校野球の監督の情熱
済美高校の上甲監督が逝去された。1975年から宇和島東高校のコーチになると1977年に監督に就任、