田中正義になれるか、成長を期待したい4投手を元プロスカウトが評価
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スカウト活動
今年のドラフト会議の超目玉として、早くも一挙手一投足に注目が集まっている創価大・田中正義投手。12球団が1位指名をするという声もある中で、他に田中正義投手に対抗できそうな投手はいないのだろうか?成長を期待したい4投手に注目をしてみた。
ドラフトの1位候補としては、球威や球速以外でもコントロールが良く、試合実績も十分な投手が即戦力として評価される。今年のドラフト候補では、流通経済大の生田目翼投手や、大阪ガスの酒居知史投手、東京ガスの山岡泰輔投手などが挙がっている。
ここでは、一皮むければ一気に田中正義投手や大谷翔平投手のようになりそうな、体が大きく速い球を投げる投手を探してみた。
白鴎大・中塚駿汰投手
まず最初に紹介したいのは、田中正義投手や大谷翔平投手と同世代の白鴎大の中塚駿太投手。中塚投手は190cm101kgの身体があり、153キロのストレートを投げる規格外の投手だ。しかし、リーグ戦にはほとんど登板せず、登板しても短いイニングで四球を与えて失点し降板をしてしまう。
速い球を投げるもののコントロールが悪くて活躍できない代表のような投手だ。しかし、2014年の横浜市長杯の上武大戦で中塚投手が7回に登板すると、常時150キロの圧巻の投球を見せ、また2015年の11月には東京情報大とのオープン戦で先発し、ストレートは151キロを記録、3回2安打2四球3三振で無失点に抑えた。
Youtube 中塚(つくば秀英→白鴎大)最速152キロ から
中塚投手の映像を見た元西武スカウトの日野茂氏は、「うーん」とうなり、「下半身が使えていない。上半身で投げている」と指摘した。
近畿大・畠世周投手
次に紹介するのも大谷・田中と同世代の投手、近畿大の畠世周投手。186cmの長身があり、まだ線は細いものの150キロを記録する。
畠投手は2年生になってリーグ戦で登板をし始めたが、2回に1四球を出すような形で勝ち星も3年生の春まで2勝ずつ6勝しか挙げられていない。しかし3年生の秋のリーグ戦で3試合連続完封をすると、6勝3敗4完封、四死球も65回2/3を投げて19とまずまず、防御率も1.78でリーグ6位の成績を残した。一気にブレークした印象がある。
畠投手についてはあまり良い映像が無いものの、実績も残しつつあり今年は多くのスカウトが注目する投手になりそうだ。
日本製紙石巻・宝利亮投手
日本製紙石巻の宝利亮投手は、186cm81kgの右腕で、最速は146キロを投げる。宝利投手は昨年の都市対抗で登板し、1回で2安打を許すも146キロの速球で2三振を奪った。この宝利投手は近大福山から近大、そして日本製紙石巻に進んだが、近大では4年間で34試合に登板したものの6勝8敗に終わっている。ちなみに近大福山や近大では畠世周投手の先輩だった。
Youtube 2015.7.19 日本製紙石巻・宝利亮投手 から
日野氏は宝利投手について、「良い球を投げる」と評価したものの、「まだまだ上体だけで投げている。下半身が使えるようになれば、もっと伸びてくる」と話した。
JR東日本・進藤拓也投手
最後はJR東日本・進藤拓也投手。進藤投手は西仙北高校から横浜商大に進み、大学時代に150キロを記録して注目されていた。しかし、コントロールが悪く、投げてみないとわからないという投球で、実績を積み重ねることは出来なかった。
この進藤投手だが、2015年の都市対抗野球では三菱重工神戸戦でリリーフで登板し153キロを記録、1回をノーヒット1四球に抑えた。しかし、日本選手権では日本生命戦で先発を託されたものの、4回途中までに4安打に4つの四死球で自責点は2、試合は1-11で敗れ、先発として試合の流れを壊してしまった。
Youtube 2015/07/20 JR東日本・進藤拓也投手
日野氏は進藤投手についても「上体に頼った投げ方、リリースもバラバラでこれではコントロールは安定しない」と話した。
スカウトとしては楽しみ
映像では3人の投手について見てもらったが、日野氏からは「下半身が使えていない」「上体で投げている」という共通の指摘をした。評価としては厳しいものだった。
しかし日野氏は「こういう投手を見に行くのはスカウトの楽しみでもある」と話す。「課題が見えているので、それを改善した時、どんな投手になるのか非常に楽しみ」と笑いながらいう。こういう投手を見て、直せる課題なのかどうかを判断し、それが治った時の投球を想像すること、これがスカウトの醍醐味の一つだと思う。
180cm後半と大きな体で、150キロを超す、あるいはそのくらいを投げる力がある投手たち、いつか課題を克服して試合で投げられる投手となり、将来は田中正義投手や大谷翔平投手と比べられる投手となる可能性を秘めている。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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