明らかになる選手の能力、チームの選手を見る目は一致しているか?
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スカウト活動
新人合同自主トレがスタートした。そこには選手を預かる1軍2軍の監督やコーチ、担当したスカウト、そしてチーム戦力を整える責任者のGMやシニアディレクターといったフロントのトップが集まり、選手の動きや能力を確かめに集まる。
伝言ゲーム
スカウトは獲得したい選手を1年以上にわたり、何度も何度も試合や練習グラウンドに足を運び調査をする。しかし日本の野球界ではプロアマの壁がまだあり、プロ志望届を提出してからでなければ、スカウトが選手に接触することは基本的に許されていない。なのでスカウトは、状態が悪くないか気になっているところはないかなどを、選手のプレーや動きだけでなく、ベンチでの姿やランニングなどを見て判断し、またそのチームの監督に聞いて情報を集める。
そしてその評価や撮影したビデオ映像などを獲得の責任者であるスカウト部長やGMなどのフロントの首脳陣に伝える。首脳陣は映像や自分で直接見に行って確かめるが、やはりその選手を一番よく見て知っているのは担当スカウトなので、スカウトの意気込みなども反映させて選手の獲得を決める。
これはドラフト会議で指名された新人選手だけではなく、外国でプレーしていた選手もおなじ。エージェントが選手の成績や評価、そして映像などを送ってきて、それをチェックする。または球団の海外スカウトが評価をし選手を推薦してくる。そしてフロントが獲得する外国人選手を決める。フロントが獲得した選手は、現場の責任者である監督などの首脳陣に伝えられていく。
スカウトも監督に選手の特徴や評価した部分、課題を伝えるが、基本的にはこのように獲得した選手の情報は伝言ゲームで伝わっている。そのため、ふたを開いてみると監督が想像していたのと違った選手だったり、あるいは故障が判明したり、たまには実力がかなり低かったりという事もあるようだ。
自主トレからキャンプになり選手が本当の力を見せ始めるとそれが見えてくる。監督のフロントもスカウトも、選手を獲得するときよりもドキドキする。もし自分が獲得した選手が故障を抱えていたり実力が足りなかったとすれば、チームの戦力に影響をしてしまい責任問題につながる。
スカウトの目、コーチの目
西武ライオンズや横浜ベイスターズでスカウトとコーチの立場の経験がある日野茂氏は、両方の立場で話をしてくれた。スカウトだったとき、あるサウスポーの社会人投手がいた。その選手は、見ている限りは球速も変化球もさほど目立たず平凡だったが、試合で一球だけ右バッターの外角低めに決まったストレートに目が留まった。その1球を追いかけて何度も選手のもとに足を運び、練習などの投球を見て獲得を強く推薦したという。その選手はプロ入りするとリリーフとして活躍をした。その1球の良さを首脳陣に伝え、その球を磨いてプロで活躍する投手となった。
また横浜ベイスターズ時代にはドラフト2位で獲得した長身左腕の吉見祐治投手について、スカウトからはフォークボールなど沈むボールが良いと報告を受けていた。しかし自主トレやキャンプでブルペンで投球をした時、一目みて「これは通用しない」と感じたという。監督やコーチなどとどのように起用するかなどを話し合い、2年目に11勝を挙げたものの、その後は勝ち切れなかった。
目利きの良いスカウトがいたり、選手の特徴や力を見抜くコーチがいる。そして決断をするフロントがいる。それがそろわないと活躍する選手を獲得できない。またスカウトとコーチの選手の見かたが大きく違っていても、選手はうまく育たない。
昨年のドラフト候補の中で、日野茂氏は富士大の多和田真三郎投手をNO.1の投手と評価した。そして、埼玉西武も多和田投手をNO.1と評価し単独1位指名での獲得を決めた。元西武のスカウトと現在の西武のフロントの目が一致していた。これは偶然だろうか。
(記事:Professional-view Baseball 編集部 柄井)
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