プロ野球選手の引き際
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プロ野球
プロ野球選手の引き際は、長年プレーしてきたベテランであっても、自分の意思で決められる選手は少ない。石毛宏典氏にプロ野球選手の引き際について聞いた。
周りに決められる引き際
毎年、年末になるとTBS系列の番組「バース・デイ」で、戦力外となった選手についての決断の模様が放映される。今年も千葉ロッテから戦力外となった中後悠平投手、矢地健人投手、オリックスから戦力外となった山本和作選手のそれぞれの決断が放送された。
プロ野球選手は基本的に球団と個人で契約をし、必要とされなければ戦力外となる。単純ではあるが、プロ野球選手になりたい選手は大勢いるしプロで野球を続けたい、またプロ野球でプレーしたいという選手も多く、12球団の70人前後の契約を獲得していくサバイバルの世界だ。その中で契約をすることができなかったとき、最終的には自分で野球を引退するという決断をするが、引き金は球団側が引く事になる。
球団側の意向で引き際を決められてしまうのは、なにも1軍で活躍できなかった選手だけではない。中日の山本昌投手は50歳となった今年までプレーし、まだ球威もあり来年も投げたいという思いもあったが、球団からの意見もあり引退を決めた。また、巨人の高橋由伸選手は、次期監督の就任を要請され、悩んだ末に決断した。形は違うものの、球団側の意向を説明され、引き際を決めた形だった。
石毛宏典の引き際
石毛宏典氏は1980年にドラフト1位でプリンスホテルから西武に入団すると、翌年からショートのレギュラーを獲得し、その後、西武の黄金時代のキャプテンとしてチームでプレーを続ける。38歳となった1994年も内野手でプレーし111試合に出場、11本塁打を放っていたが、その年、森祇晶監督の退任が決まり、その後任の監督にと要請があった。昨年の高橋由伸氏と同じような形である。
しかし石毛氏の決断は現役を続ける事だった。「現役は引退したら終わり。コーチや監督はこれからできる」と考え、FA権を行使して福岡ダイエーホークスに移籍を決断する。その後、ダイエーでは1995年は1軍出場が58試合、翌96年は18試合に終わり、その年のオフに引退を決断する。2年間について石毛氏はファームで若い選手と共に汗を流し周囲からは、なんでこんなところで必死にプレーしてるんだと言われたこともあったと言うが、年俸が50%ダウンとなっても、2軍で必死にプレーしていた。
その後、福岡ダイエーの2軍監督、そして2002年にはオリックスの1軍監督に就任する。しかしオリックスでは、監督就任時から様々な事を経験し1年とわずかで解任となった(後日記事にいたします)が、自らの引き際について、満足もしていないが様々な事を経験し不満だったわけでもない様子で語っている。
周りに言ってくれる人がいる
引き際について、元プロ野球選手の日野茂氏は「周りに言ってくれる人」がいる事の大切さを話す。自らもプロ野球の引退については、フロントからいきなりコーチ就任を通告のような形で言われたというが、その後、コーチ、2軍監督、1軍ヘッドコーチなどで後進を育ててきた。そして日野氏も、解説者やコーチなどの仕事を打診され、プロ野球選手を続けるかその仕事を引き受けるかを悩んでいる選手に対し、プロ野球選手としての力を客観的に伝え、仕事の打診を受けているならばその道に進むことをアドバイスしたという。
石毛氏も「選手は、やはり現役を続けていたい」と考えると話す。しかし周りに客観的に見てくれて、進路をアドバイスしてくれる人の存在も大切である。
(記事:Professional-view Baseball 編集部 柄井)
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