2015年ドラフトを元西武スカウト・日野茂氏に聞く
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スカウト活動
2015年のドラフト会議から1ヶ月が経ち、球団では入団発表が行われている。今年のドラフト会議の指名の感想を、元西武の日野茂氏に聞いた。
直前に評価が急激に上がった選手
編集部:「今年はドラフト直前に急激に評価が上がった選手が目立ったように思いました。巨人の桜井俊貴投手は10月に入ってからのリーグ戦で150キロを記録してのドラフト1位指名でした。他にも今年1年間で153キロ投手となった大商大・岡田明丈投手やもいます。これだけ見ると”秋の結果が重要”とも感じてしまいますが」
日野:「直前に活躍したからといって、スカウトはその時期だけで判断していることは無い。元々スカウトが目をつけていた選手を追いかけていて『あともうひと伸びすればなぁ』と思っている選手が、急に花開く事がある。活躍の前後もしっかり見て指名をしている」
編集部:「確かに桜井俊貴投手は公立高校の北須磨高校の時から注目され、リーグ戦でも1年生で登板していました。そこもずっと注目していたという事になりますね。しかしその中で、慶応大の谷田成吾選手はずっと注目され、4年生秋に5本のホームランを放ちましたが、結局指名漏れとなりました。」
日野:「あともう一つが足りない、そういう状態が続いている。中学時代も川口でプレーをしていたが、その時、聞いた話でも、もちろん当時から活躍もしていたが、あと一つ何かが足りないという事だった。高校でも70本のホームランを打っても、大学で秋に5本打っても、結局スカウトの中で最後まで、”あと一つ”が残ってしまったのだろう」
編集部:「そのあと一つというものは、どんなものなのでしょうか?」
日野:「選手によって違うけど、例えば動きのキレだったり、守備の時の集中力、バッターボックスの中の雰囲気などちょっとしたもので受ける印象が変わる事がある」
編集部:「大舞台での活躍、という物もあるかもしれませんね。谷田選手はイメージとしてはスマートなプレーをする印象ですが、社会人では都市対抗野球などで気迫あふれる打撃も見たいですね。当然、得意の右方向へ伸びる打球も魅力ですが」
バッティングは変われるが守備は・・・
編集部:「今年は野手の1位指名選手が多く、阪神が高山俊選手、オリックスが吉田正尚選手、楽天がオコエ瑠偉選手と外野手を、千葉ロッテが平沢大河選手を指名しています。とびぬけて数が多いという事ではありませんが、話題となった選手が多く注目されました。野手の指名についてはいかがでしょうか」
日野:「バッティングはプロに入って変わることができる。古田敦也選手をみてもそうだし、古くは武上四郎なんかもあれだけ打てるとは思わなかった。それに比べて守備はセンスというものがある。これはプロに入ってもなかなか変わらない。」
編集部:「これはプロ側でも、『打撃は鍛えれば打率.250までは打てるようになる。しかし肩や足は鍛えられないので、そういう素質のある選手を獲る』と聞きます」
日野:「バッティングは、ポイントさえしっかりしていれば、非力で打てないという選手が体を鍛えれば打てるようになる。守備や肩、足は素質というものがある」と話した。
編集部:「高校生で指名された平沢選手やオコエ選手はもちろん、高山選手は東京六大学で128安打の通算安打リーグ新記録を樹立しましたが金本監督より強いスイングを求められており、吉田選手プロとの壮行試合や高校代表との壮行試合でホームランを放つなど大学代表の4番を務めていましたが、自ら『自分は中距離打者』と話していました。プロに入ってから、どのように変わっていくのか注目ですね。
注目した選手は?
このサイトで注目した選手も続々指名されてプロの世界に足を踏み入れます。夏の甲子園で注目した霞ケ浦・綾部翔投手、専大松戸の原嵩投手はそれぞれ横浜DeNAと千葉ロッテにドラフト5位で指名され、他にも高校生投手で注目した日大三島の小澤怜史投手はソフトバンクに2位で、打者で注目していた智弁学園の広岡大志選手は東京ヤクルトに3位で指名されました。
日野氏は常に話すのは「プロに入ることが目標ではだめ。プロに入って活躍することを目標にすること」が大切という事です。夢だったプロ野球選手になることができ、確かに達成感はあるでしょう。しかし、例えば今年同じチームに入団した選手の中でプロで1軍で活躍できるのは多くても3人くらいでしょう。1人が1軍に定着すればある程度成功とも言われます。自分がその選手になることができるか、これまでよりもシビアで厳しい闘いがもう始まっています。
最後に
編集部:「最後に、今年のドラフトで日野さんが一押しだったのは、富士大の多和田真三郎投手でした。その多和田投手は西武が高く評価して単独で1位指名しました。他球団は1位指名をしなかったことから、元西武のスカウトだった日野さんと目が一致しているという事になりますが、そういう事はあるのでしょうか?」
日野:「選手の見方、評価の仕方というもので、チームごとに受け継がれたりしているものはあるのかもしれないね」
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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