駒澤大の2軍降格についてOBの石毛宏典氏が語る
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大学野球
東都大学リーグの1部2部入れ替え戦で、1部6位の駒澤大は、2部1位の東洋大に1勝2敗と負け越し2部降格が決まった。来年からは神宮球場ではなく、大学のグラウンドで試合を行う事となった。
昨年秋に日本一
駒澤大学は東都の雄としてプロ野球にも多くの選手を輩出してきた。石毛宏典氏、中畑清氏などプロ野球で活躍し監督を務めた人もいる。2008年に2部に降格したものの2010年の秋の入れ替え戦で1部に復帰し、2011年春から10季を1部で戦った。2014年秋には明治神宮大会で優勝し日本一となっている。その名門チームが1年後の今年秋には2部に降格した。
入れ替え戦は駒澤大のエースで横浜DeNAからドラフト1位指名を受けた今永昇太投手と、東洋大のエースで東京ヤクルトからドラフト1位指名を受けた原樹理投手の対決で注目されたが、万全の原投手が3試合に登板し、今永投手は初戦こそ3安打12奪三振完封で勝利したが3戦目では力尽きた。特に打線は秋のリーグ12試合で19点、1試合あたり1.58点しか奪えていない。入れ替え戦でも初戦は1点、2戦目は4点、3戦目は1点しか奪えず、エースの今永投手の調子次第というチーム状況になっていた。
石毛氏が理由を語る
石毛宏典氏は駒大の元主将として、駒大の様子を気にかけていた。2部降格となってしまったチームについて、一つは選手のスカウティングと起用だと話す。「教授会の力が強く、スポーツ部は選手枠の取り合いをしている」という状況ではあるが、推薦で入部した選手以外にも多くの選手が名門の駒大には入ってくる。野球部は今年秋の時点で93人の部員がおり、高校野球の名門出身の選手もそろっている。
しかし、スポーツ推薦で獲得した選手についても、また背番号をつけてベンチ入りしている選手についても「目的が見えにくい」と話す。それでも、「出ている選手の質は高い」とそれぞれの選手の特徴を挙げてくれた。(ここでは詳しくは書かないが)
スカウティングや起用も理由に挙げたものん、「最大の理由はバッターの意識の問題」と、強く指摘をした。東都大学1部のレベルでは、ランナーを進める打撃などレベルの高いものが求められる。しかしチームの打者はまず基本ができていないため、例えば逆方向のバッティングを試合でしようとしているが、当てるだけのバッティングになってしまっている。「まず基本ができていない」と石毛氏は話す。
これは中央大OBで元西武ライオンズの日野茂氏も、大学生でも基本が大切だしそれができてない選手が多い。それはプロ野球でも同じ」と話す。名門の高校などでプレーした選手を集めても基本ができていない選手は多いという。その中で駒澤大はなぜ打てなかったのかを聞くと、石毛氏は即座に「打撃を変える勇気が無かった」と話す。
変える勇気
変える勇気について石毛氏は埼玉西武ライオンズの秋山翔吾選手の話をしてくれた。秋山選手は2011年に西武入りするとすぐに110試合に出場し、3年目には152安打を打って打率も.270をマークした。しかし4年目となった2014年は123安打、打率.259にやや落ちるとそのオフに今までの打撃を大きく変更した。そして今年、打率.359、プロ新記録の216安打を記録した。
「プロ野球選手でも、それだけの結果を残していても打撃を変えているのに、大学生がこれまで高校野球でやってきた打撃を変えていない」と話し、「できないのに変える勇気が無かった」と指摘した。石毛氏もアマチュア指導資格を回復しており、駒澤大を訪れて1ヶ月に1度ほど選手を見ることがあるというが、「1か月後にいっても全く変わっていなかった」と話す。変える勇気がない理由としては、「まだ本気でやろうとしていない」と話した。
駒澤大にアドバイス
駒澤大が今後復帰するために石毛氏は「練習から変える必要がある」と話し、「他の大学とは違う事をしなければ上には上がれない」と話した。
バッティングについては「まずは真ん中の球をセンター方向に飛ばすことを練習し、しっかりとスイングをできるようになってからその次の打撃練習をしてほしい」と話した。
また、「試合前のシートノックなども、ボールが飛んでくる順番が決まっている中でノックを受けても意味が無い。」と話し、「練習ではシートノックなどでしっかり守って、実践的な練習をすること」と、「紅白戦などを増やして、練習と試合でプレーが変わる選手をチェックすること」と話した。
エースの今永昇太投手が卒業をし頼るものが無くなった駒澤大、U18代表で活躍した中京大中京の上野翔太郎投手など有望な選手が入学予定だが、今年の口惜しさを味わった選手たちが、練習から大きく変えてどれだけ変わっていくのかに期待をしたい。その先に1部復帰が見えてくる。
(記事:Professional-view Baseball 柄井)
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