しっかりとやるべきことを繰り返して、東京大学の野球部の勝利
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大学野球
東京六大学リーグでは東京大学が、2010年10月2日に早稲田大に勝って以来、約4年半にわたって94連敗と連敗記録を続けていたが、2015年5月23日、法政大に延長の末6-4で勝利した。
勝利の気配
5月9日の立教大戦、東京大学は立教大学に5-4と1点差まで追い上げる戦いを見せていた。最速で148キロの速球を投げる3年生の山本俊投手が先発したもののコントロールが良くなく、ストライクを取りに行った所を打たれて初回に4点を失った。山本投手は3回にも1失点してマウンドを降りたが、その後は東京大と立教大の流れが変わる。
3回裏に立教大のエースで3年生の沢田圭介投手から2点を返すと、7回にも2点を奪って降板に追い込んだ。投手陣も2年生の柴田叡宙投手、3年生のサイドスロー・三木豪投手、そして2年生の145キロを投げるリーグ屈指の左腕投手・宮台康平投手とつなぎ、4回以降は無失点に抑え、あと一歩で同点というところまで追い上げた。
明治大や早稲田大など、全国から有力な選手を集めてくるチームならばわかるが、スポーツ推薦もなく、厳しい受験によって入学する東京大学に、148キロを投げる投手や、145キロを投げる投手がそろっているというのは非常に珍しい。その二人は、昨年秋から試合によって相手にまったく隙を与えない投球を見せる事もあった。ただしその調子は投げて見ないとわからない所もあり、継投の中で一人の調子が悪くて失点し敗れるという試合も何試合かあった。しかし、継投の調子いかんで相手を完封できる可能性も感じさせていた。
やるべきことを繰り返し
また東京大の選手は動きも違っていた。カバーリングにおいて、ファーストにランナーがでると、牽制球1球でいろいろな選手がカバーリングに動く。セカンドはファーストが後ろにそらした時のケアを、そしてサードはというと、ファーストから投手に返球するときに備えて、カバーリングをする。
5月9日の2試合において、サードがきちんとカバーリングをしていたのは、早稲田大の茂木栄五郎選手と東大の長藤祥悟選手だけだった。やるべきことをきちんとやっているのが今の東京大だといえる。他の大学のように名門の高校で一流のプレーをしていた選手がいない分、エラーをしてもそれを最小限にとどめるという気持ちが見られていた。
強豪になるために
ただし今の戦い方では、投手が一人でも調子が悪いと失点し、名の通った相手の投手に抑え込まれて敗れてしまう。選手層が薄い東京大において、継投する投手がすべて相手を抑え込める可能性はまだ低い。
2002年に、浅岡投手と松家投手という2人がともに完投能力があり、秋には立教大に2勝して勝ち点を奪った事がある。選手層の薄い東大においては、先発を任せた投手が調子が良い状態で完投することだろう。山本俊選手はコントロールの精度を上げ、また宮台投手、三木投手は今の安定感のまま完投できるスタミナがつけば、たの大学に脅威を与えるチームになるだろう。
この勝利で目標のステージを1つ上げることができた。投手は今度は完投勝利を目指すことができるし、その先のプロ入りも目標に入ってくる可能性も出てきた。
そういう意味でもとても大きな1勝となった。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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