監督の色とチームバランス
公開日:
:
プロ野球
ペナントレースが始まり、3カードの対戦が終わった。両リーグとも抜け出すようなチームが無い中で、セリーグは広島、パリーグはオリックスといった優勝の期待が高かったチームが苦戦している。どのような事が考えられるのだろう。
チームバランス
元横浜ベイスターズで2軍監督などを務めた日野茂氏は、オリックスのチーム状態について、「補強でチームバランスが崩れている」と指摘した。金子千尋投手や吉田一将投手といった投手の故障の影響も大きいだろうが、打線が補強をしたわりには迫力が欠けている。
「去年が絶妙のバランスだったのだと思う」と日野氏は話す。
昨年のオーダーと今年のオーダーを書いてみる。
2014年
打順 | |
1 | 平野恵(ヘルマン) |
2 | 安達(平野) |
3 | 糸井 |
4 | ペーニャ(糸井) |
5 | T岡田 |
6 | ヘルマン(ペーニャ) |
7 | 川端(原拓) |
8 | 駿太、坂口 |
9 | 伊藤 |
2015年
打順 | |
1 | ヘルマン |
2 | 平野恵 |
3 | 糸井 |
4 | 中嶋 |
5 | T岡田(ブランコ) |
6 | 小谷野 |
7 | 坂口 |
8 | 安達 |
9 | 伊藤 |
オフに中嶋選手、ブランコ選手、小谷野選手を獲得し、主軸を一層した形になっている。その前からも糸井選手やペーニャ選手などを獲得しており、主軸を外部から招へいする事は比較的多いチームではあったが、今年は中嶋選手を不動の4番に据えた。
並びだけをみると強力になったように見える。ただし打線というものも、ただ大砲や打つ選手を並べるだけではつながらない。1998年の横浜ベイスターズのマシンガン打線のようにそれぞれが役割を認識し、前後を打つバッターの特徴やプレーを理解することで、繋がりが生まれる。
まだ始まったばかりであり、これからお互いがプレーを理解し信頼してくるだろう。終盤戦には破壊力が威力を見せるようになると思う。ただし、今の状況で借金を膨らませると取り返しがつかないことになる。耐える時期だろう。
監督の色
広島カープはというと、打線についてはあまり入れ替わりを見せていない。エルドレッド選手の故障があったが、昨年もエルドレッド選手が故障をする中で戦っている。変わったといえば野村監督から緒方監督に代わった事だろう。ただし、監督の交代というのは、思う以上に大きな変化を与えるという。
監督がどんなプレーを期待しているのか、選手は見ている。そして監督考えと選手の考えが重なって、初めて力を出す。サッカーでは監督によってフォーメーションが変わったり、大きく変化することがあるが、野球もあまり目に見えないかもしれないが、監督の考えというのはチームのベースになっている。
野村前監督がAクラスに入るチームを作ったが、そのままで今年は優勝まで手が届いたかはわからない。そこに緒方監督の色が加わる事で、優勝へのあと一歩に手が届くと考えたのかもしれない。緒方監督は1番でドラフト1位ルーキーの野間選手を起用し、自分の色をチームに溶け込まそうとしている。
ちなみに福岡ソフトバンクも秋山監督から工藤監督に交代したが、まず選手が勝ち方を知っていることが大きく、充実した戦力もある。したがって工藤監督は今年は大きなチームカラーや選手起用の変更はせず、現有戦力の見極めて自分の色を出すのは来年からとなりそうだ。
広島は選手が優勝の仕方を理解しているわけではない。監督の考えと選手の考えが一致してようやく優勝が望めるチームだろう。その時期がいつごろ訪れるかはわからないが、そこまで待つ必要があるのだろう。
野球は戦力を集めるだけで勝てるものではない。その戦力を結び付けてようやく勝てるチームになる。選手同士がお互いを理解して結びつくのか、監督が考え方を選手に伝えて結びつけるのか。優勝経験が少ないチームは優勝をするには、やはり時間がかかるといえる。
(Professional baseball view 編集部)
関連記事
-
-
中畑清監督について、駒大の後輩・石毛宏典氏が語る
横浜DeNAの監督を4年間務めた中畑清監督が、前半は首位だったものの後半失速し、最下位に沈んだことを
-
-
気が早いけど、来年の新人王を予想してみる
プロ野球の今年度の新人王争いは、セリーグは新人最多セーブ記録を更新したDeNAの山崎康晃投手が最有力
-
-
チーム編成トップの役割
プロ野球でチームを強くするために、また運営するために重要な役割を持つフロント、その中でチーム編成の
-
-
プロ野球の名将のよもやま話、石毛宏典氏、日野茂氏が語る
プロ野球には名将と呼ばれる監督がいる。石毛宏典氏はプロ野球時代に根本陸夫監督、広岡達郎監督、森祇晶監
-
-
松坂大輔が帰ってくる!その1
日本の野球に松坂大輔が帰ってくる。松坂大輔投手の活躍を振り返る。 高校2年から急成長 松坂大
-
-
石毛宏典氏が語る、スランプに落ちる瞬間と2年目のジンクス
プロ野球選手は143試合の長丁場を戦う、この間に何度か調子のよい時と悪い時を迎える。プロ野球で16年
-
-
プロ野球選手のエラーと教育、横浜DeNA・白崎浩之選手
セリーグの最下位に低迷する横浜DeNA、4月23日の巨人戦では2年目のショート・白崎浩之選手が3失策
-
-
石毛宏典氏、日本シリーズで一番強かったのは1985年の阪神
石毛宏典氏は、西武ライオンズの黄金期を戦い、11度の日本シリーズを経験し、8度の日本一に輝いている
-
-
野球の魅力 ~人vs人の世界~
野球の魅力の一つに、チーム競技でありながら個人競技の魅力を持つ点があります。そしてそれは、「誰にも
-
-
東京オリンピック、野球の実施の課題~その1~
2020年の東京オリンピックで野球、ソフトボールの実施の可能性が徐々に高まってきた。オリンピックに
- PREV
- プロ野球チームの緻密な経営で、ピラミッドの頂点から落ちる日も
- NEXT
- プロ野球の今昔