プロ野球ファーム組織は次を目指して
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野球の制度
プロ野球の育成選手制度は2005年から始まり今年で10年目を迎える。育成出身の選手が活躍をする一方、試合の機会が少なく、選手を育成しきれなかったという失敗もあった。10年目を迎えた育成選手制度を検証する。
成功事例
育成選手制度が成功したというとすれば、それはやはり、育成出身の選手がプロ野球で活躍したかどうかという事だろう。育成ドラフトで指名され入団した選手のうち支配下登録されたのは、2013年までで156人中47人に上る。 選手の一覧は育成ドラフト指名選手の支配下登録率はどのくらいか? を参照されたい。
中でも1軍で活躍を主な選手をピックアップすると、
巨人・山口鉄也投手・・・2007年の支配下登録され、2014年までの8年間で222ホールドを記録、球界屈指の左のリリーフ。
巨人・松本哲也選手・・・2007年に支配下登録、2009年には129試合に出場し打率.293を記録
千葉ロッテ・西野勇士投手・・・2008年に育成ドラフトで指名、2012年に支配下登録され、2014年には31セーブを挙げ、侍ジャパン入りを果たした。
これだけ多くの選手が、本来ならばプロ野球に入ることがかなわなかったかもしれないことを考えると、成功をしたようにも見える。
課題
しかし課題もある。育成ドラフト精度が始まった当初、巨人が2006年に7人を育成ドラフトで指名、千葉ロッテも2008年に8人を指名した。その中から支配下登録されている選手もいるが、支配下登録されずに戦力外となった選手からは、「試合の機会が少なく、試合の経験を積むことができなかった」といった声も挙がった。
育成選手はファームの試合に出場できるが、当然ファームは支配下登録され選手が主にプレーをするため、育成選手の出場機会は少なかった。そしてNPBではフューチャーズといった、将来を期待される若手育成チーム(育成選手だけではない)を作り、試合の機会を増やそうとしたものの、なかなかうまくいかなかった。
育成制度がそういう厳しいものなので、それを覚悟で育成選手としてプロ野球に入った選手には当然という事もあるが、育成ドラフトで指名された選手も、アマチュアの中では素質を注目された逸材であり、試合に使う事もできずに戦力外になってしまうのは、もったいないなという選手もいた。
アメリカでは、ファーム組織が大きく、3A、2A、1A、育成といった所があり、日本では考えられない程多くの選手がファームでプレーしている。しかし、それぞれのリーグで試合が行われており、試合経験という面では多くの機会を得られている。
新たなステージへ
多くの球団が育成選手の人数を絞り、多くても5人くらいを抱える体制を獲り、たとえ育成選手であっても大切に育てようという形になってきた。
しかしその中で福岡ソフトバンクは、2014年にも8人、2013年に4人、2012年に4人を育成ドラフトで指名している。球団は3軍という名称でチームを作っている。それは他のチームでも当初やっていたことだが、福岡ソフトバンクは、今年、3月24日から3月29日まで、福岡工業大、福岡大、九州共立大、西部ガス、旭川大、熊本ゴールデンラークスと毎日、アマチュアのチームと練習試合を行っている。
地元のアマチュアチームも巻き込んで、新たな動きが進んでいるように見える。
また、4月には四国アイランドリーグのチームと試合を行う事になっている。横浜DeNAもBCリーグに少しだけ加わって試合を行うなどしていたが、各チームが独立リーグに選手を派遣したりと、独立リーグとの繋がりを加速している。
育成のシステムといえば、サッカーが先を進んでいたが、NPBにおいてもアマチュアとの試合、独立リーグとの試合、サテライト的な教育のシステムの構築が進みつつあるようだ。
多くの選手が1軍に登場するような形はもちろん、たとえ育成選手のままで解雇されても、「力は見せたからしかたない」と思えるような、そんな形に近づけられれば良い。
(Professional baseball view 編集部)
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