プロ野球の世界で生き残るために必要な事
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プロ野球
プロ野球では12球団の新人選手発表が滞りなく行われ、ほぼすべてのイベントは終了した。そして新人は年明けには合同自主トレに参加し、プロの世界に足を踏み入れる。しかし全員が大きな期待を受け、スター選手になっていくことはない。プロの中でどのように生き残るのかを考える必要がある選手もいる。
先輩の言葉
日野茂氏は1968年にプロ野球に入団し、すぐに行われた紅白戦ではホームランなど長打を複数本放って新聞にも報道された。しかしその翌日、ある先輩内野手からこのように言われた。
「日野、お前には守備のことは聞かれても教えない。ただ打撃については何でも聞いてこい」
日野氏も最初は何のことかわからなかったという。ただし、その後、打撃で壁にぶつかり、守備を磨いていく。プロ野球選手としてはその後、西鉄、太平洋に移籍し、守備を中心に60試合前後に出場したものの6年間で現役を辞める。ただし、その磨いた守備でスカウト、コーチ、二軍監督などでプロ野球で生きていった。
「今、思うと、先輩に見抜かれていた」と話す。先輩は守備については自分と同じレベルかそれ以上のものがあることを感じたのだろう。そして打撃については、教えてやっても俺を越えることはできない。入団してすぐにそれを見抜いていたのだと振り返る。
1軍枠、戦力外の基準
フロントとしても活動をしていた日野氏は、選手の評価を行い、戦力外の判断をしたり、来年の戦力を整える仕事もしていた。基本的に来年の1軍の戦力として考えるのは、
「野手20人、投手15人とし、それに入れ替わる選手をそれぞれ3,4人」
としており、オフの時点である程度それを決めているという。そしてシーズン中に3,4人を入れ替えるようだ。そして戦力外については
「そのポジションでランクを付けて下位となった選手を戦力外にする」
という。
自分を見て他人を見る
「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」という言葉が孫子の兵法書にある。プロで生きる道もまさしくそれだ。この先輩は自分の力量、そしてライバルとなる日野氏の力量を見抜いていた。そして日野氏もそれがわかるようになり、同じポジションに入ってくる選手の力量を見て、守備を磨くことにしたと話した。プロで生きる道を選択したのだ。
日野氏はコーチになり、2軍監督で指導をしたが、「自分の力や、自分がどのランクにいるのかを理解していない選手が多い」と話す。そして戦力外にすると、「球団や指導者が合わなかった」というのはそういう選手が多いとも話す。でも周りから見れば戦力外になる選手は明らかに見えている物らしい。
すべての投手が速い球を投げて1軍で活躍したり、打撃・守備で活躍してレギュラーを取れるという事はない。常に自分の力量とライバルの力量を見て、自分が今どのランクにいるのかを理解すること、そしてランク外となっているときには、自分より上の選手にいかにして勝るかを考える事で、プロ野球で生き続けることができるのだと話した。
指導者としても生かせる
相手のプレーを見て力量を判断できるようになれば、コーチとして指導することもしやすくなる。そしてコーチや監督としてどの選手を使うべきか、選手起用が巧みになる。
さらに、フロントやスカウトとして、選手の獲得やチームの戦力を確保する役割もできるようになる。これもプロ野球で生きる道だ。
現役選手として長くプレーするためにも、その後、指導者としてプロで生きるためにも、自分の力、そして相手の力を見極められ、自分の中でランクを付けられるようになることが大切なのです。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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