横浜DeNAが2011年に獲得した高校生選手を自由契約に
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プロ野球
横浜DeNAは2011年に高校生8人を指名したものの、ドラフト1位の北方悠誠投手や帝京の伊藤拓郎投手など指名した4人の投手を3年で戦力外とした。この件を検証する。
高校卒投手4人を戦力外に
今年の戦力外通告で、2011年に指名された高校生投手、北方悠誠投手、佐村トラヴィス幹久投手、古村徹投手、伊藤拓郎投手の4人に戦力外を通告した。佐村投手はドラフト6位、古村投手、伊藤投手は8位、9位での指名、そして北方投手はドラフト1位の投手ということで、ドラフト1位指名した選手を3年間で解雇するという異例の事態で、話題となっている。
まず佐村投手、古村投手についてはプロ1年目が終わった2012年オフに自由契約となり、育成選手として再契約している。2013年オフも契約を延長したものの、2014年オフに戦力外となった。球団は戦力外の再契約はしない模様。また伊藤拓郎投手は帝京高校時代に1年生で甲子園で140キロ後半の速球を出し、怪物として注目された投手だが、ドラフト会議では最後となるドラフト9位で指名された。1年目の終盤戦に1軍で登板したものの、その後は活躍ができず戦力外となった。
この3人については、ドラフトの指名順位でも下位であり、3年程度が勝負だという覚悟もあったと思う。元プロ野球スカウトの日野氏もこれについては「プロとはこういう物、厳しい世界」と話している。
ただし、3人が納得しているかというとそうでもなさそうだ。以前より巨人などの育成枠の選手が十分な試合の機会が少なく、経験を積めないままに時が過ぎてしまっているという問題があった。横浜DeNAも今回「投手が多く、育成が難しい」ため、他球団で早めに戦力外として他球団に育成してもらったほうが良い、という理由も述べていた。
プロ側の問題
またドラフト1位の北方投手については、日野氏も戦力外には理解を示すものの「3年は早い」と繰り返した。唐津商時代に制球難も153キロを記録し、ドラフト1位で入団した投手である。そして2年目オフの昨年秋に、台湾のウインターリーグで158キロを記録するなど、今年期待されてた選手だった。
それが、制球難により死球を与えるなどして、サイドスローに転向したものの課題を克服できず、再びオーバースローに戻したが球速が出なくなったという。横浜DeNAは現役時代にサイドスローだった木塚氏が2軍コーチだったが、球団は来年はコーチとして契約しないことを発表しており、責任を取らされたとも受け取れる。
2011年はTBSからDeNAにオーナーが交代する中で、DeNAの参入に対して一部の球団から反対があり、参入の時期が遅れた。そしてドラフト会議は旧TBSのフロントの元で行われ、TBSも新しい球団に想いを託して9人中8人の高校生を指名した。しかし、選手枠がある中で育成すべき選手が多く、特に投手は74人中42人を占めていた。ちなみに巨人は80人を保有し投手は39人、野手は41人となっている。
巨人、阪神と横浜DeNAのポジション別選手数
投手 | 捕手 | 内野 | 外野 | 合計 | |
巨人 | 39 | 8 | 19 | 14 | 80 |
阪神 | 33 | 10 | 15 | 13 | 71 |
横浜DeNA | 42 | 6 | 15 | 11 | 74 |
球団としても故障もしていないのに登板機会が得られなかったりという事もあり、投手の数を減らして他球団並の割合にしたいという考えがった。そして投手は11人が戦力外となっている。
確かに実力で他の選手にかなわなかった事もあるが、こうしたチーム事情によって戦力外となった要因はある。高田GMがスタッフのポストを用意しているなど、球団としても申し訳ないという気持ちがあるようだ。
選手側の意識の問題
しかし選手側の意識の問題もある。日野氏は高校生でプロ入りする選手について、「自分を知らなさすぎる選手が多い」と話す。周りからの甘い言葉で夢だったプロ入りが目前に迫った時、最終的に決断するのは自分であり、そこで自分の実力を知っておかなければいけない。
またもう一つ、日野氏は「目標のポイントが違う場合がある」と話す。野球選手にとって、目標を「プロ野球選手になる」としている選手が多い。しかし目標は「プロで活躍すること」としておかなければ、このように早い時期で戦力外となってしまう。プロで活躍することを目標にして考えたとき、2011年にプロ入りを断って大学に進学していたかもしれない。そうすると今は3年生という時期であり、プロ入りを意識し始める時だった。
「プロで活躍できるかどうかは運、不運の要素も大きい」と日野氏は話したが、選手には「プロで活躍すること」を目標にしてほしいと話す。
元スカウトの日野氏は最後に「23歳から25歳まではやらせたい」と話した。それを考えて実力を見て獲得を決めるという。
ただ、そこまでいかずに戦力外にしてしまったとき、「最もつらいのはスカウト」だと話した。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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