身体的能力が目立たなかった稲葉篤紀選手が、プロ野球を大きく発展させた
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プロ野球
北海道日本ハムの稲葉篤紀選手が今季限りで引退をする。法政大の時にドラフト会議で3位でヤクルトが指名してプロ20年間のスタートを切ったが、その逸話は非常に有名だ。
素質はなかった
中学校、高校の指導者に稲葉篤紀選手の事を聞くと、「肩は強くなかった」「足も遅かった」と話す。また小中学校の指導者に至っては「他の選手と同じく普通の選手だった」と話す。
プロ野球に行く子は、小学校や中学校の時から、身長が頭一つ出ていたり、投げる球の強さやスイングスピードが他の子よりも抜きんでている場合が多い。そのため、小学生ながら中学生と一緒に練習をしていたりと、早くから注目をされる。
しかし、稲葉選手についてはどうも小学生や中学生の時には、それほど目立たなかった選手だったようだ。
素質があった
それでも稲葉選手は野球の名門である中京高校に進む。そして東京六大学の法政大に進んでいる。高校への進学は、中学生の段階で少年野球チームの監督が推薦をしたり、高校側の監督が欲しがったりして、また大学進学時も同様にして有力選手は有名な高校、大学に進む事ができるが、稲葉選手はまさに名門高校、東京六大学と王道を進んでいった。
法政大では1年生から起用されるものの、ケガ等もあってスタメンに定着できず、3年春にファーストでレギュラーとなり、4年生の時に明治大戦で放ったホームランが当時ヤクルトの監督だった野村克也監督の目にとまり、指名されるに至った。ちなみに大学でリーグ通算本塁打は6本、その1本が貴重なホームランとなった。
元ヤクルトのスカウト部長だった片岡氏によると、ドラフト前に近鉄が稲葉選手の獲得を狙っていたという。稲葉選手も後に「近鉄バファローズから指名される予定だった」と話している。近鉄は3位以降で指名したかったようだが、ドラフト会場で野村監督がスカウトに「あの法政の左はどうなっとる」と指名を促して先に3位で指名をした。
もうこの時点で多くの人から望まれるような素質を見せていた。肩の強さでもなく、足の速さでもない。リーグ6本塁打で通算打率も.280と成績も特に目立つようなものではない。それでも大学日本代表入りし、プロ入りをしている。
身体的な素質ではなく、練習に取り組む姿勢とその練習によって得られた独自の理論や人間性が、稲葉選手の魅力となった。「練習に取り組む事」が、稲葉選手の素質だったと言える。
プロ野球でも
プロ野球では東京ヤクルト、北海道日本ハムで7度の優勝、5人の監督を胴上げし、2009年にはWBCで世界一となった。ちなみに法政大も優勝をさせている。
野村監督も星野監督も栗山監督も「教科書のよう」と稲葉選手の練習への取り組む姿を例える。そしてこの姿勢は人を引き付け影響し、他の選手ばかりでなく、監督やコーチをも動かす。
練習を取り組む素質を持った稲葉選手が優勝請負人として過ごした20年間で、多くの選手や監督・コーチが育った事だろう。肩も強くなく足も遅かった偉大な選手が、プロ野球を大きく発展させた。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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