スカウトの神様は野球マニアだった、時代で変わるスカウトの評価
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スカウト活動
プロ野球のスカウトがすごいと思うのはスカウトは誰なのだろう?元西武ライオンズでスカウトをしていた日野茂氏に聞くと、難しそうな表情をして「スカウトは時代によって評価されるポイントが変わる」と言いながら、一人のスカウトの名前を挙げた。
スカウトの神様は
「尊敬するスカウトはいますか?」という質問に日野氏は、木庭教氏の名前を挙げた。
木庭スカウトは広島のスカウトとして、山本浩二、三村敏之、池谷公二郎、正田耕三、達川光男、高橋慶彦、川口和久、大野豊といった広島の黄金期のメンバーをスカウトし「スカウトの神様」と呼ばれている。しかし、もともとはプロ野球の選手ではなく、野球観戦マニアだった。その趣味が高じて広島球団に「獲得すべき選手のリスト」を送り、これが広島カープの事務局長の目に留まって、スカウトとして広島カープに入団している。
スピードガンの導入などを積極的に行い、また球団のスカウトの地域による分担制を外れ、全国を一人で周り、無名ながら有望な選手を見つけて獲得しては、プロ野球で一流の選手として活躍した。
日野氏は木庭氏のすごさについて「ドラフト外であんな選手を獲った」と驚かされたという。そしてその選手を自分の足で全国を歩きまわって探してくる姿にすごさを感じている。
時代によって変わるスカウトの価値
かつてはドラフト外というドラフト会議で指名されなかった選手を、ドラフト後に獲得しても良いというルールがあった。日野氏や木庭氏が活動をしていた時代は、ドラフト外でどんな選手を獲ってくるのかが、スカウト同士で評価の対象となっていたようだ。
また日野氏が評価するスカウトとして、「あの選手をよく2位で指名したな」と、無名の選手を高い順位で指名し、その選手がプロで成績を残したときには驚かされるという。
その後、本来はドラフト1位で指名されそうな選手をドラフト外で獲得するなど問題が増えてきた事などから、ドラフト外の制度は無くなった。そして、逆指名枠や自由枠といった制度が導入されると、今度は有望選手から逆指名を得る事ができるスカウトが、評価が上がるようになった。
そしてその逆指名の競争がエスカレートし、裏金の問題が次々と明らかになって廃止され、現在は高校生、大学生はプロ志望届を提出した選手のみが指名できる制度となった。ドラフト会議の前に選手名が公表されるため、名前も知らなような本当の隠し玉ということはなくなった。
今のドラフト制度ではドラフト1位や2位などの選手が、きっちりと評価通りの活躍をするかどうかが評価されているように思う。そのため、ドラフト1位で無名の選手を獲得したりというよりは、他球団も注目しているような選手を1位で指名するようになり、ドラフト会議での抽選は、外れ1位抽選も含めて回数が増えているように見える。
夢よりは現実を、といったところだろうか。
それでも2010年の愛知県立の蒲郡高校・千賀滉大投手や、20113年に宮城県立の岩出山高校・今野龍太投手などが指名され、プロ入りすると150キロを超すような速球を1年目から投げる姿をみると、この選手を獲得したスカウトや獲得に同意した球団は、やはりすごいと思う。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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