夏の高校野球、2011年からの選手宣誓の内容と宣誓をした主将たち
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高校野球
いよいよ夏の高校野球、甲子園大会が開幕しました。今年は作新学院主将・中村幸一郎選手による選手宣誓が行われ、シンプルながら堂々とした宣誓が行われました。これまでの選手宣誓についてまとめてみます。
今大会の選手宣誓・全文
「誕生90年という節目の年。今、この場所に立てることを誇りに感じています。 甲子園、その存在が私たちを大きく成長させてくれます。可能性がある限り、最後まで挑戦し続け、長く記憶に残る大会にすることを誓います。
今まで支えていただいた方々に感謝し、そして全国の野球を愛する人々に夢、感動を与えます。」
90周年を迎え、全国の高校球児からあこがれの場所とされる甲子園への想いを描き、なお自分たちが主役として感謝とともに感動を与える事を宣誓した素晴らしい内容でした。
2013年(第95回大会)の選手宣誓
昨年、2013年の選手宣誓は帯広大谷・杉浦大斗主将によって行われました。杉浦主将はその年の秋に東京ヤクルトにドラフト1位で入団する事になる杉浦稔大投手の弟です。
「私たちは今、この甲子園球場に立てることに幸せを感じています。
第95回を数える長い歴史の中でさまざまな困難を乗り越え、本当に多くの先輩方が前を向き、夢、感動、勇気を与えてくれました。それを私たちが継承し、また先輩方に負けないように決して諦めず、仲間を信じ、未来を信じ、今よりも一歩でも前進します。
今生きていること、すべての命に生かされている重みをしっかりと受け止め、高校生らしく爽やかに、すがすがしいプレーをすることを誓います。」
95回の記念大会となった高校野球選手権大会の歴史を中心に、継承と未来を描いた内容でした。また最後には命についても触れられ、東日本大震災から2年経ったものの、まだその影響が感じられるものです。
2012年(第94回大会)の選手宣誓
選手宣誓や酒田南・下妻貴寛主将によって行われました。下妻主将はこの年のドラフト会議で東北楽天からドラフト4位で指名され、将来の正捕手として背番号39を背負いプレーしています。
「私が暮らす東北を、そして東日本を未曽有の災害が襲ったあの日から、いま日本は決して忘れることのない悲しい記憶を胸に、それでも復興への道を少しずつ確かな足取りで歩み始め、多くの試練と困難に立ち向かっています。
私たちのひた向きなプレーが、あすへと懸命に生きる人々の希望となることを信じ、私たちの躍動する体と精神が、あすへと進む日本の無限の可能性となることを信じ、そして、私たちの追い続ける夢が、あすの若者の夢へとつながっていることを信じます。
全国の仲間が憧れたこの甲子園で、わき上がる入道雲のようにたくましく、吹き抜ける浜風のように爽やかに、正々堂々と全力でプレーすることを誓います。」
やはり東日本大震災から1年しか大会という事もあり、また東北地方出身の下妻主将でもあることから、東日本大震災からの復興を強く載せています。そして最後には高校生らしく爽やかな表現で締めくくっています。
2011年(第93回大会)の選手宣誓
この年の選手宣誓は金沢高校の石田翔太主将によって行われました。石田翔太選手は現在は東海大学で3年生となり、レギュラーを目指しています。
「春から夏にかけて、どれだけの時が経っても忘れることのない、さまざまなことが起きました。
それでも、失うばかりではありません。日本中のみんなが仲間です。支え合い、助け合い、頑張ろう。
私たちは精一杯の笑顔で、全国の高校球児と、思いを白球に込め、この甲子園から消えることのない深い絆と勇気を日本中の仲間に届けられるよう、全力でプレーすることを誓います。」
この年の春に東日本大震災が発生してまだ間もなく、人々の記憶にもまだ新しい事から、直接的な表現をあえて避けている十分な心遣いが感じられる内容です。ただし高校生である自分たちの笑顔と絆と勇気で前に進んでいこうという気持ちが伝わってきます。
最後に2011年センバツ大会の選手宣誓
2011年のセンバツ大会は東日本大震災が発生して間もなく開催される予定でした。しかし、未曾有の大災害で会ったことや人々の心の状況もあり、大会を開催をするべきかが議論となった大会でした。
様々な対策をした上で大会は日程通り開催されました。通常ならば選手宣誓をする首相は、組み合わせ抽選の時に主将自身がくじを引いて選ばれるのですが、この年は奥島会長がくじを引いて選ばれました。
選ばれたのは創志学園の野山慎介主将でしたが、実は創志学園は創部1年目でセンバツ出場を決めたチームで部員はまだ全員1年生、主将の野山選手も選手宣誓時はまだ1年生でした。
「私たちは16年前、阪神淡路大震災の年に生まれました。
今 東日本大震災で多くの貴い命が奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。
被災地ではすべての方が一丸となり、仲間とともにがんばっておられます。人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えることができると信じています。
私たちに今できること。それはこの大会を精いっぱい元気を出して戦うことです。がんばろう 日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います。」
東日本大震災からまだ10日程度しか経っていない中で、見事な選手宣誓をして、被災地だけでなく日本中を勇気づけました。
ちなみに野山選手はその翌年に東海大学に入学、内野手としてプレーしています。2011年夏に選手宣誓をした石田選手の後輩となっているのは、偶然なのでしょうか。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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