元プロスカウトに、済美高・安楽智大投手を評価してもらう
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高校野球
2013年の選抜高校野球大会で準優勝し、その夏の愛媛県大会で最速157キロを記録した済美高校・安楽知大投手、その後、秋の大会では初戦で右手の違和感を訴えで降板すると故障が判明し、その後、約1年間をかけて復活を目指した。
今年の夏の愛媛県大会では3回戦ので東温高校に敗れ、夏連続出場と甲子園に再び立つ夢は終わってしまった。しかし球速は148キロを記録したという。はたして安楽投手はどのようになっているのだろう?元西武ライオンズでスカウトをしていた日野茂氏に映像を見てもらい評価をお願いした。
見ていただいた映像は今年夏の愛媛大会3回戦・東温戦の映像、6月に行われた明徳義塾との招待試合の投球、そして昨年のセンバツ高校野球大会の映像の3点。安楽投手は昨年9月に故障が発生してから今年の5月までは本格的な登板はしていないとされ、この3つの映像を日野氏に見てもらった。
この夏の投球
まずはじめにこの夏の投球の映像を見てもらった。体に目いっぱい力を入れて投げていた印象の安楽投手だが、この夏は非常に完成された投球をしており、ちょうど昨年の18Uワールドカップでキューバを10奪三振で完封した時の投球に印象は似ている。
球速こそ140キロ前半だがストレートは低めに角度がある。外角低めにも投げられインコースにも投げられていた。また、ストレートと同じくらい武器の大きく曲がるスライダーも曲がりが大きく、タイミングを外したり空振りを奪っていた。
それでも真ん中に入ると、以前の球威では詰まってファールになっていたと思うがヒットにされ、またコンパクトなスイングで挑んできた東温の打者に148キロを記録したストレートをレフト前に運ばれて失点した。
日野氏はまずこの投球を映像で見て、「以前は決めようとした時に力が入っていた」と話した。故障前はランナーを出したりすると力で抑え込もうと力み、球がシュート回転したりしていたが、この夏は決めに行くときも力が入っていないということを指摘した。安楽投手の成長した部分だろう。
6月の投球、そして2013年センバツの投球
そして次に、6月の投球と2013年の選抜の投球を続けてみて見てもらった。6月の投球はこの夏の投球に比べて緩い変化球が多く、ストレートも強く投げられていない印象で、球の角度も夏よりもないように見えた。
そして2013年のセンバツ大会の投球、確かに体全体で力いっぱい投げている。目もギラギラとして勢いを感じた。ストレートはシュート回転したり真ん中高めの球が多いものの、やはり150キロ近くを常に記録している球は、前にはなかなか飛んでいない。
この夏の投球、6月の後にセンバツの映像を見て日野氏は「やはり魅力がある投手」とつぶやいた。2年生で150キロの速球を豪快に投げる安楽投手を見て、未完成でも大きなものを感じたのだろう。そしてこの夏の映像をもう一度見直すと、「やはり故障の影響はあるね」と話した。
2年生の時の粗いものの豪快な投球を見せていた安楽投手と、この夏の完成度は高くなった安楽投手についての比較はしなかったが、センバツの映像を見たときの日野氏のつぶやきを聞くと、なんとなく気持ちが伝わった。
今の完成度の高い投球でも十分魅力がある。それに高校2年時の勢いや球威が戻って加わる事を期待したい。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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