高校野球の魅力と変わること
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高校野球
先月、高校野球は変われるか?という記事で、高校生投手の球数の多さを指摘し、高校生の将来も考えて投球の間隔を広げる日程で大会を行うように提案した。そして、高校野球連盟がタイブレークの導入を検討しているというニュースが入った。それについて様々な反応があるが、もう一度考えてみたい。
天秤
高校生の夢と体
一方で高校野球の投手が球を投げすぎるによって体を消耗している。昨年のセンバツで772球を投げた安楽智大投手、夏の大会で687球を投げた高橋光成投手は、1年間かかっても昨年のようなピッチングはまだできていない。
高校球児の夢は「甲子園で優勝すること」であることが多く、そのためには自分の将来を顧みない選手も多い。それで夢を達成したものの肩を壊し、その後の野球人生では活躍を見せられなかった選手もいる。
「将来のことを考えてここまで」と考えたり、言える選手は非常に少ないだろうと思う。
野球の人気と人々への印象
その一方で日本の高校野球の人気は、プロ野球人気にもつながる大切なものである。田中将大投手のように、高校野球のスターが成長していく姿を見るのが魅力の一つでもある。なぜ田中将大投手に人々が注目をしているのかというと、高校野球(特に夏の甲子園)での投球があったからだろう。同じように、北海道日本ハムの斎藤佑樹と投手だって、東京六大学では神宮球場を満員にし、プロ入りする際には多くの注目を集めた。
残念ながら甲子園のスターは、厳しい環境で投げ続ける姿を一般の人々が見て感動する場面で生まれる事が多いのだと思う。
もしあの2006年の夏、決勝戦の延長15回が無く、たとえば延長11回からタイブレークで決着がついていたとすると、世間の人々はここまで田中将大投手や斎藤佑樹投手に注目をしていただろうか?もし1998年の夏の甲子園、松坂大輔投手の横浜高校とPL学園の対戦がタイブレークで決着していたら、多くの人々の記憶に松坂大輔投手が残っただろうか?
また当事者である選手や監督や関係者がここまで高校野球に情熱を注ぐことができただろうか?
どっちがいいということはない
ケガをする投手が減れば素晴らしい事だろう。
しかし、タイブレークを大学野球選手権等で見るとやはり物足りなさを感じる。これは野球にそれほど詳しくない人々に知られるようなヒーローが誕生する機会を減らし、高校野球人気、延いては日本の野球人気に影響をするのは必須だと思う。
選手のケガが減ったとしても、プロ野球は選手やチームの人気が必要。高校野球にそれを求めるのもお門違いかもしれないが、日本の場合は高校野球でヒーローが生まれ、その選手がプロで人気を集めていく形があるの間違いなく、野球自体が廃れては意味もなくなってくる。
中途半端な結論になってしまうが、バランスが必要と言わざるを得ない。
投手を守る方法は
まず今回はタイブレークの導入ばかりが注目されてしまったが、高校野球連盟は一つの例として挙げたもので、投手をけがから守るための方法はほかにもたくさんある。
・連投の規制、連投をさせない日程
・1試合の投球数の規制
・タイブレークの導入
・その他
この中で1試合の球数を減らすこと、連投をさせないこと、また連投をさせないとしたら何日空けるのか、まずはこのあたりから分析しなければいけない。田中将大投手がひじのじん帯を部分断裂したが、あれは前年までの投球が影響をしているのか、球数を制限しても中4日の間隔が良くないのか、それともほかの問題なのか。
個人差もあるしメジャーでも答えが出ていない問題なので難しいだろうが、検証をしていく必要がある。
例えば
たとえばタイブレークを延長16回からにすれば、再試合による連投は防げるだろう。15回まで戦えばファンも納得するかもしれない。しかし15回を一人で投げれば150球以上は確実に投げているだろう。日程が今のままでは結局翌日も連投ということになるかもしれない。それで現状から変わるのだろうか?
そう考えると、タイブレークはやはり11回とか12回から導入しなければ意味を持たない。その時、見ているファンは結果に納得するだろうか。
たとえば1試合の球数を100球に規制したとする。そうすると複数の投手を集めてこられる強豪チームに対し、選手を集められないチームが1人のエースで対戦する場合、ますます勝ちにくくなる。各都道府県で1,2チームの強豪が常に勝つような大会でよいのだろうか?
どの対策を導入するにしても、非常に難しい判断になる。前回の記事では、大会日程を広げる事を提案した。甲子園大会が無理でも、せめて都道府県大会は試合間隔をあければとしたが、これは「野球人気の影響は最小限に抑える」ということで、「投手への負担はやや軽減されるだけ」かもしれない。
高校野球連盟が動き出したことは非常に素晴らしい事だと思う。しかし、分析によってできる限りの最善の応えが出ることを期待したいし、協力もしたい。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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