大谷翔平選手の活躍とマーケティング戦略
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プロ野球
6月19日、北海道日本ハムの大谷翔平選手が8回を投げて1安打11奪三振で無失点に抑えた。甲子園で見せた大谷投手のパフォーマンスが話題となっている。
しかし大谷投手は高校時代は甲子園では活躍することはなく、本来ならばそれほど知名度のない選手のはずだった。しかし、度重なる期待感とそれに応える大谷翔平投手の実力が、いまの人気につながっている。
高校野球のスター
荒木大輔、桑田真澄、松坂大輔、田中将大、みんな高校時代に甲子園で活躍しスターになった選手で、プロ野球に入団する時点で注目されている存在でした。
日本の野球人気は、高校野球に支えられている所があります。国営放送が一日中、その大会のすべての試合をLIVE中継するというアマチュアスポーツは、世界でも稀でしょう。そうなると自然と活躍した選手の名前くらいは、野球やスポーツに興味がない人にもインプットされています。
その中で、松坂大輔投手の「延長17回の死闘」や「決勝のノーヒットノーラン」、田中将大投手の「決勝での延長15回引き分け再試合」といったドラマチックな活躍を見せると、一気に知名度が上がります。
高校野球で集められた知名度はプロ野球でも引き継がれ、プロ野球選手を見ていると高校時代の姿を思い出す選手が何人もいます。
大谷翔平投手はスターではなかった
大谷翔平投手は、花巻東高校の2年生の夏と3年生の春に甲子園に出場しているが、ともに1回戦で敗退しています。しかも、2年夏の帝京戦は故障により外野で出場、途中からマウンドに登るも勝ち越し点を許して敗れました。また、3年春は1回戦大阪桐蔭戦でも、11四死球を与えて9失点という内容で、活躍したとはいいがたい結果です。
さらに3年生の夏は甲子園出場を逃し、本来ならば一般の人が知ることもないままに、プロ入りする選手でした
しかし、
「3年生の夏、岩手大会準決勝で、高校生最速の160キロを記録した。」
「ドラフト会議前にメジャー宣言を行った」
「それでも北海道日本ハムが指名し、何度か説得を行って入団を決めた」
「その時に二刀流を提案し、プロ野球で実際に二刀流に取り組んでいる」
プロ入り前にこれだけの話題がありました。ここで初めて名前を知った人も多かったでしょう。そして、野球が好きでネットで動画を探しているような人でなければ、「大谷翔平って誰?」という事になったでしょう。
期待感が注目度を上げる
2年生の夏も3年生の春も試合前には、報道やネットで「大谷翔平という凄い投手がいる」という情報が流れていた。しかし実際に凄さは見られなかった。
3年夏も160キロを出したものの甲子園出場でその姿を見られなかった。
そしてドラフト前にメジャー宣言をし、北海道日本ハムが強行指名し、入団を決めると二刀流になるという。
常に期待されながらその姿を見せずにプロ入りをしました。野球ファンは焦らされ、一般の人はどんな選手かわからないままに。
そしてベールを脱いだ大谷翔平投手は、ようやくファンが期待する(それ以上の)パフォーマンスを見せました。
もしこれが仕組まれたマーケティング戦略だったら凄いと思います。
しかし、実際には大谷翔平という選手が自分で作り出したもので、自然に周りの期待感を生み、その期待に大きく応えたという事なのでしょう。
「やっぱり本物だった」という安心感が、今の人気の正体だと思います。
しかし、サッカーの日本代表の本田圭佑選手に比べると、まだまだ野球を知らない一般の人への知名度は低いと思います。大谷翔平選手の自らの自然なプロデュースは、これからWBCだったり、オリンピックだったり、メジャーへの挑戦という形で続いていくでしょう。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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