京都大学の勝ち点への道のり
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大学野球
関西学生野球リーグの京都大学が5月7日の同志社大戦で勝利し、23季ぶりの勝ち点を挙げた。この勝ち点の獲得までの道のりを紹介する。
監督と選手の成長
2009年11月、京都大学は京都大学野球部OBではない人物が監督に就任した。沖縄・興南高校の監督として6度の甲子園出場を果たし、阪神で活躍した仲田幸司投手や、現在中日の投手コーチを務める友利結投手を育てた、比屋根吉信監督である。
比屋根監督は2010年のシーズンからチームの指揮を執ったものの、2010年は春、秋ともに勝利をつかむことはできなかった。しかし2011年春、ある選手の活躍がリーグを沸かせた。京都大の4年生・新実彰平選手が29打数12安打、打率.414で首位打者に輝いたのだ。12本とも単打のコツコツと積み上げたもので、その後、プロ入りした金子侑司選手などを抑えての首位打者だった。
新実選手は関西テレビでアナウンサーをしている。
しかし2011年も勝利をつかむことができず、連敗はつながってしまっていた。そして2012年、今度は投手に輝く選手が登場する。2年生になった田中英祐投手で、球速は147キロを計測し、白陵高校時代は兵庫県大会で、甲子園にも出場している強豪の加古川北を相手に7回1失点と好投をしたこともある投手だった。
その田中投手は関西学院大戦に先発すると、9回を投げて5安打完封勝利、これで京都大の連敗は60で止まり、勝ち点までの道が始まる。
監督の退任とエース
京都大学である。名門大学リーグの野球部とはいっても、やはり甲子園に出場した選手がいるわけではなく、リーグのほかのチームである、同志社大、立命館大、関西学院大、関西大、近畿大と比べると、質も量も劣っていた。投手が好投してもエラーで足を引っ張ったり、田中投手以外の投手は大量失点して敗れるケースも見られた。
そして2010年から指揮を執ってきた比屋根監督が2012年に突然辞任する。「基礎ができ、選手がやればできるということは分かったはず。次の世代にバトンタッチする時期だと思う」と取材に応えたが、名将はわずか3年で交代することになる。
2012年は春1勝10敗1引き分け、秋も同じだった。そして迎えた2013年、京都大は他の大学と接戦を演じるようになる。1戦目は田中英祐投手が延長戦も一人で投げ切る奮闘を見せ、2戦目は冨田真吾投手が先発して3,4回を投げて、リリーフえ田中英祐投手が連投するというパターンで、勝ち点を奪いに行く。その結果、春は2勝を挙げたが、勝ち点は奪うことができなかった。
そして2013年秋、田中英祐投手は立命館大との1回戦で延長21回、237球を一人で投げ抜き、0-0の引き分けに持ち込んで話題となった。このシーズンは1勝どまりも、田中英祐投手はほかにも延長15回を投げて敗れた試合もあり、その結果、ベストナインに選ばれるのだった。
田中抜きで勝利
勝ち点を奪うには、同じチームとのカードで2連戦で2勝するか、3試合で2勝を挙げる必要がある。田中投手はリーグを代表する投手に育っていたが、どうしても2戦目、3戦目の勝利が必要だった。チームでは「田中抜きで勝利を」が合言葉となった。
そして2014年、田中英祐投手が4年生となり最後の年である。田中投手のような投手が再び京都大にいることは、これまでもこれからもほとんど無いだろう。プロのスカウトが話題性だけでなく即戦力として注目するほどの投手だった。
まず開幕カードの関西学院大戦で開幕戦を田中投手が2-1で勝利する。しかし2戦目は1-11で大敗すると3戦目は田中投手も勢いを止められず3-7で勝ち点を奪うことができなかった。
続くカードは近畿大、初戦は田中投手が好投するも0-1で敗れた。しかし2戦目、冨田投手が3回を1失点、田中投手が6回を無失点に抑えると、チームが9回に2点を奪い逆転サヨナラで勝利を手にした。しかし3回戦、初回に3点を奪ったものの、冨田投手、田中投手が失点し3-10で敗れ、再び勝ち点は奪えなかった。
勝ち点を奪うチャンスはあと3回、迎えた同志社大戦の初戦、田中英祐投手が完封し再びチャンスが訪れる。そして2戦目、京都大は勝負をかけ、田中投手を連投の先発マウンドに送った。しかしこの賭けは失敗し1-2で試合を落とす。エースは3連投も辞さずとベンチで準備をした3戦目、冨田投手がリーグ初勝利、初完封で念願の勝ち点を奪った。
実にここまで田中投手がリーグ通算7勝24敗、冨田投手が1勝12敗、ようやくつかんだ勝ち点だった。
京都大は4位に浮上し、残り4連勝すればリーグ優勝の可能性も出てきている。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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