なぜこの選手を獲得できなかったのか?嘉陽宗一郎投手
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スカウト活動
昨日、東都大学リーグの亜細亜大と駒沢大の対戦が行われ、亜細亜大学が勝利した。勝利投手になったのは、今年のドラフト候補の山崎康晃投手でも、駒沢大で3試合連続完封をしている今永昇太投手でもなく、亜細亜大の1年生・嘉陽宗一郎投手だった。187cmから147キロの速球を投げるこの投手は、なぜドラフト会議で指名されなかったのだろうか。
嘉陽宗一郎投手
嘉陽宗一郎投手は、沖縄県出身で中学時代は軟式野球部でプレーし、高校で松山聖陵高校に進学した。入学時は130キロほどしか球速は出なかったようだが180cmを越える身長があり期待されて成長すると、2年生の後半には140キロを軽く超す真っすぐを投げていたという。
近年の愛媛県の野球レベルは高く、1年生の時には西條の小川慶也投手(現日本体育大2年)、宇和島東の中川源和投手(現駒沢大2年)、 松山商業の堀田晃投手(現大阪学院大2年)といった投手が覇を競い、また嘉陽投手が2年生になった秋季大会では、済美高校の1年生・安楽智大投手と延長14回の投げ合いをしている。
この試合に敗れ甲子園への切符は済美高校の手に渡ると、翌年のセンバツで済美高校が準優勝し、安楽智大投手は一躍時の人となった。その夏、松山聖陵は愛媛大会の準決勝まで進出するも、今治西に1-0で敗れ甲子園出場はならなかった。8回を完投し7安打5奪三振で1失点という好投だった。
最速147キロを投げる大型投手としてプロも注目したが、プロ志望はせずに亜細亜大学へ進学している。
レベルの高さを実感
嘉陽投手にはある程度プロを意識できていたのではないかと思う。186cmの身長があり147キロの真っすぐを投げる。毎週のようにスカウトが訪れていたはずだ。しかし、自分よりも力があると思われた投手はすべて大学へ進学し、その大学では1年目からレベルの壁に当たっていた。
また、安楽智大投手と対戦し、150キロを超す真っすぐを投げる安楽投手のすごさに、こういう投手がプロに行く投手だと感じたことだろう。この安楽投手の存在によって、プロに行くならもっと成長してドラフト1位でプロへ、そんな思いがあったのかもしれない。
また中学時代は沖縄県でプレーしていて、そのころ見ていた沖縄尚学の東浜巨投手や、興南高校の島袋洋奨投手が甲子園で優勝したにもかかわらず、東京の大学へ進学している。沖縄県出身の野球選手は、東京の大学に行くケースが多く、嘉陽投手も東浜巨投手や嶺井博希捕手が進学した亜細亜大へと進んだ。
プロも将来性にかけた
以前、元西武のスカウトをしていた日野氏は高校生の評価について、現在の評価と将来の評価の2つの軸を持っていると話した。高校生で良いと思った選手がいても、大学・社会人で成長してから、という判断をすることもある。それは、野球の能力だけでなく、人間としての成長、都会に住むことの対応など様々なことを考慮している。
また選手の指名人数も球団によって限りがある。将来は有望と思える選手がいてもチーム状況を優先することがほとんどだという。
嘉陽投手には東都大学リーグで厳しい中でも勝ち抜いて、4年後にはドラフト上位候補として成長する姿を見たのだろう。その期待に早くも応えている。これからどんな成長をするのだろう。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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