70連敗を止めにいった東大の誤算
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最終更新日:2014/04/23
大学野球
東京六大学では東京大学がワーストタイの70連敗となった。2010年の早稲田大学戦で斎藤佑樹投手に勝って以来、実に3年間、6シーズン勝ち星が無い状態が続いている。その東京大学、慶応大戦では2戦目に全ての可能性をかけて連敗を止めようとしていた。
エースを2戦目に
東京大学のエースは辰亥由崇投手である。球速こそ120km/h台が多いものの、桑田真澄コーチから教わった低めのコントロールで勝負する投手である。そしてこの辰亥投手は、4月12日の開幕試合、強打の明治大打線を7回まで2失点に抑える好投をしていた。
68連敗で迎えた慶応大戦、慶応大は初戦で加嶋宏毅投手の先発が予想された。東京大学は昨年秋のリーグ戦で加嶋投手にノーヒットノーランを記録されている苦手な投手である。そこで、東京大学は69連敗目は覚悟したというような采配をする。初戦でエースの辰亥投手ではなく、石上翔太投手を先発させた。投手陣は継投をするも9回で7失点し、打線も苦手・加嶋投手に4安打で完封される。
そうして迎えた2回戦、満を持して辰亥投手が先発をする。辰亥投手は5回まで2安打に抑えたが2失点をしてしまう。そして交代した後の投手が打ち込まれ、最終的には13失点をしてしまった。逆に慶応大は2年生の加藤拓也投手が7回1安打で無失点、代わった投手から2点を奪ったものの2-13で東京大学は敗れ、ワーストタイに並ぶ70連敗となった。
慶大2戦目を狙った
東京六大学リーグは土曜日、日曜日に対戦が行われ、1勝1敗となった場合に月曜日に3回戦が行われる。そのため各大学とも1戦目にエースを持ってきて、3戦目にもつれ込んだ時は中1日でエースを投げられるようにする。そのため相手の投手の格が落ちる2戦目にエース辰亥投手を持ってきて連敗を69で止めようとしたとみられる。
最近の東京六大学というと、明治大や早稲田大、法政大は甲子園で活躍した選手や、プロも欲しがった選手、各地の有力選手を集めており、立教大もここ数年は有名な高校生選手を獲得している。一方、慶応大も慶応義塾高校が甲子園に出場し、その世代に合わせて、日大三で4番を打っていた横尾俊建選手等を獲得したものの、他の高校よりは補強が大人しいように見える。
さらに慶応大はこのカードが開幕カードであり、先に開幕していた東大に比べエンジンがかかっていなかったり、シーズン初先発で緊張している投手の立ち上がりをたたける可能性もあった。そういう意味では、この慶応大の2戦目は狙い目だった。
しかし、実は慶応大は昨年秋に150キロを記録した2年生の加藤拓也投手がいた。慶応義塾高校出身のこの速球派投手は、落ち着いた立ち上がりを見せ、手も足も出ずに抑えられてしまった。
早稲田大・有原航平に記録阻止をかけて挑戦
次節は2週間後の5月3日、相手は早稲田大となる。70連敗のワーストタイ記録となり、新記録を阻止するためにもエースの辰亥投手が初戦で先発するだろう。対する早稲田大学のエース・有原航平投手は156キロを記録しプロからも大いに注目されている投手である。先日の法政大戦でも完封勝利をしており、調子も悪くない。また有原投手は2013年の春季リーグ戦の東大戦でも7回2安打7奪三振で無失点と、見た限りでは大学に入って最高のピッチングをしている。
しかし可能性が無いわけではない。前回勝利したのは早稲田大で、ドラフト会議で1位指名をされた斎藤佑樹投手からだった。エース同士の正々堂々の対戦でワースト記録を阻む。相手がそれだけの投手だからこそ、負けてもともと、当たって砕けてがむしゃらに1点を奪い、必死に1点を守る野球を見せてほしい。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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