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盗塁:バッテリーとランナーの3.3秒の攻防

公開日: : プレー解説

盗塁は、日本の野球に置いて、チャンスを広げ、得点を挙げるために重視されるプレーの一つである。その盗塁にはどのような技術が必要なのか、一流のプロ野球選手が何を意識して盗塁をしているのか、プロ野球通算243盗塁を記録し、77.4%の成功率を残している石毛宏典氏と、西武ライオンズコーチを務めた日野茂氏に話を聞いた。

盗塁に必要な技術?

盗塁に必要な技術として、次の6つを挙げてみる。

  • 足の速さ
  • リードの広さ
  • スライディング
  • 投手の観察
  • データ
  • 勇気

まずそのまま、この中でどれが最も大切なのかを、石毛氏、日野氏に聞いてみた。

石毛氏は「自分は投手の観察を最も重視していた。投手の背中を見て感じ取って、投球モーションをする前にスタートを切ることを重視していた」と話した。いかに投球モーションをスタートするよりも先にスタートを切れるかが重要だという。

これについて日野氏はデータを説明した。

「投手がホームに投げるのに1.3秒かかる。そしてキャッチャーのセカンドへの送球が2.0秒かかる。つまりランナーは、3.3秒でセカンドベースに到達しなければならない。西武の時に最も早かった山尾選手が3.12秒だった。」

このランナーに与えられた3.3秒を分析してみる。まず石毛氏は、「チーム内では秋山など他にも足の速い選手がいた」と話した。しかし、投手の観察をする事で投手がモーションをするよりも先にスタートを切れれば有利になる。他にも、次の事が挙げられる。

  • 投手の投球モーション
  • 投球の種類や位置(変化球、内角低めなど)
  • キャッチャーの送球モーション
  • キャッチャーの送球の速さ
  • キャッチャーの送球の正確さ

それらによって、3.3秒が長くてもセーフになるようになる。また、ランナーにとっても「土のグラウンドとタータンの場合であ0.2秒くらい違いがある」と、球場や環境によっても秒数が変わってくるという。

では投手のどの部分を見ているのかを聞くと、「背中を見て感じているのだから、感覚というものが近い」と話したが、「投手はホームに投げる時とけん制をする時には、無意識にフォームに違いが出る」と話す。具体的には「肩を入れる」「足のあげ方」「首の振り方、アゴのあげ方」などがある。

他にもプロ野球選手は、リードをどれだけとれるか、ベースでスピードを落とさずにスライディングができるかなどを各自で研究し、盗塁の技術磨いているという。スライディングについては、「ベース際のスピードや勢いがあるほうがいい。それによって審判がセーフと判定する」と話し、審判へのアピールとしても大切と話した。

走りにくい投手

昔は、投手のけん制やクイックの技術が今よりも繊細でなかったと両氏は話す。今は映像で分析をされ、クセが明らかになりやすい。また昔の投手は盗塁させてもバッターを抑えればいい、という投手も多かったという。

その中でも、昔も走りにくい投手、けん制などを考えている投手がいた。南海にいた山内孝徳投手、ロッテの水谷則博投手はクイックが素早く、盗塁を防ぐ技術を磨いてたとい話す。また江夏豊投手は、けん制で逆を突く事が非常にうまかったという。投球モーションに入り、ホームに投げると思ってランナーが二塁側に体重を少しでもかけると、そのタイミングでけん制が来た。あまりリードを取らないランナーもけん制で刺されたという。

盗塁の技術を磨く

盗塁ができるようになるにはどうすればよいだろう。日野氏は「日頃からストップウォッチと遊ぶ事」と話した。まず「自分がセカンドまで何秒で走れるか」を把握する事」が大切で、「例えばセカンドまで3.5秒だったとすると、モーションの大きな投手、またはキャッチャーの送球が早くない場合にはそれでも成功できると自信が持てるようになる」という。

必ずしも足が速い選手が、盗塁の成功率が高いわけではない。頭を使って考える事の大切さがここでも分かった。

そして石毛氏に「盗塁するときは勇気は必要か?」を聞くと、「必要、盗塁するときはかなりの緊張感がある」という。「自分の秒数と相手の秒数を比較しておくと、走る勇気が得られる」と日野氏は話した。

盗塁を防ぐには?

では盗塁を防ぐにはどうすればよいだろう。ショートでプレーをしていた石毛氏と、内野守備のコーチをしていた日野氏からは、面白い話が聞かれた。

石毛氏は、「投手にけん制をしないこと」をアドバイスしていたという。けん制をする事で、どういう時にどういうモーションでけん制をするのかを、相手に情報を与えてしまう、と教えてくれた。

また西武時代にはセカンドランナーを刺す練習もしていたといい、「ノーサインでランナーを刺す。サインではなかなかランナーを刺せない」と話した。「投手にもよるが、ショートがベースに入るのを見てノーサインでセカンドに投げる。」という。日野氏は、その時に投手は「ランナーにぶつける感じで投げろ」と教えていたという。ベース上に投げるのでは間に合わない。ランナーが戻ってくる位置にボールを投げ、ショートはそのランナーの前で捕球をしてそのままタッチをするという、高度なプレーを練習していた。

盗塁というプレー

野球はサードにランナーを進めるかが得点につながっていく。

盗塁はメジャーではあまり重視されていない、という話しも聞いたりするが、「成功率が70%未満の選手を走らせることは良くない」という事で、成功率の高い選手は走ったほうが得点につながりやすくなるのは明らかだ。日野氏は「盗塁は得点の可能性を高くするためのプレー」と話し、石毛氏も「日本では盗塁は重視されているプレーの一つだと思う」と話した。そして日野氏は「得点を取るためにチャレンジをしていく、これがスポーツ」だと話した。

バッテリーとランナーによる、3.3秒を奪う攻防、そしてバッテリーと内野手で連携したけん制プレー、それを見るには、テレビではなかなか味わえないかもしれない。グラウンドやスタジアムで観戦する場合には、その部分も注目するとより楽しくなるかもしれない。

(プロフェッショナルベースボール:柄井 匡)

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    解説者:石毛宏典氏(元西武ライオンズチームリーダー、オリックスブルーウェーブ監督、四国アイランドリーグ創立者)

    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」
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    取材協力:元プロ野球選手が教える野球塾
    「ZEROベースボールアカデミー」
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