*

選手の成長とケガのケアに重点を置いた、工藤監督の福岡ソフトバンク優勝に石毛宏典氏語る

公開日: : プロ野球

 工藤公康監督が就任して1年目の福岡ソフトバンクがパリーグ優勝を果たした。コーチ未経験での就任1年目での優勝について、元西武ライオンズでチームメイトだった石毛宏典氏は「選手のケガ」について最も意識していたと話す。

故障を深く考える選手

 工藤監督は昨年秋に監督に就任すると、元西武でチームメイトだった石毛宏典氏は工藤監督より、「最も気をつけなければいけないのは主力の故障」と話していたという。そして選手の故障については特に気を配っていた。

 工藤監督は現役時代、名古屋電気高校からプロ入りすると3年目までは中継ぎとして経験を積みアメリカ留学を経験した後、4年目となる1985年から先発として8勝、その後11勝、15勝、10勝と勝ち星を重ね西武のエースとしての活躍を見せた。しかし10勝を挙げていた1988年には肩やひじの痛みに悩まされると翌年の1989年には4勝8敗と低迷する。当時のプロ野球は科学的な練習メニューやトレーニングというものは無く、自己流のトレーニングで故障を悪化させたりという事もあったという。治療法や手術などいろいろなアドバイスをされたが、ここで筑波大の白木仁氏と出会い「痛みはハムストリングの強化で治る」とアドバイスを受け、指導に基づいてトレーニングを続けると痛みも取れていた。1991年には16勝を挙げ、その後5年連続2ケタ勝利を挙げている。

 痛みは休ませるだけでなく、トレーニングをすることで取れるという事を学ぶと、それ以来、白木氏とのトレーニングの他、鹿島アントラーズの合同自主トレに参加したり、トレーニングの医学書などを読みあさり知識を蓄えた。その成果もあり、29年間も現役生活を続けることができた。

 肩は消耗品と言われる。MLBでも1試合に球数を制限したりという考え方がある。キャンプなどで投げ込む事もあまりなく、日本人投手が200球を投げ込んだと聞くと「信じられない」と話す。しかしそれはアメリカ人だからかもしれない。日本人でもそういう人もいる。ただ全員がそうではない。投げて肩を鍛えてプロで200勝をした投手は何人もいる。ただ人に言われるまま、一般的な治療を受けるのでなく、自ら考えた治療を選択したのが工藤選手だった。

 

選手の故障と成長に気配り

 主力の故障を気を付けるといっても、選手が1年間プレーをしていれば様々な場面で故障は起こりうる。今年の福岡ソフトバンクも長谷川選手や大隣投手が故障で離脱し、キャプテンで4番を任せた内川選手も離脱をした時期があった。その時、工藤監督は試合前に治療をしている選手に会いに行ったり、連絡を取ったり、また治療を行っている医師にも連絡をとっていたという。石毛氏も「現役時代に故障もし、そこでトレーニングについて得た知識と経験を活かした」と話し、個々の選手の状況を監督が把握し、自らの経験からアドバイスをしていたという。通り一遍の治療ではなく、選手が自ら考えて治療に取り組むようにしていた。

 そして工藤監督は選手の成長にも気配りをしていた。期待の若手投手をいきなり先発に起用するのでなく、「自分も現役時代そうだった」と話すように「何度かリリーフで起用して先発を経験させ、悪ければ一度2軍に落として考えさせた後、今度は先発で起用した」と話す。また2軍の選手の起用について、「調子が良くなってから上げるのではなく、調子が良くなる前の時点で1軍にあげた」と話している。多くの1軍監督は2軍の選手については、2軍の監督などからの報告を元に1軍に引き上げていたが、工藤監督は1軍の試合前に2軍の試合を視察し、自らの目で選手の状態を見ていた。そのため、シーズンが始まってから休養日となったのは3日だけだったという。

 さらに1軍の上げた選手でも、成長してほしいと思った選手は、故障をしても2軍に落とさずに1軍でベンチの中に入れ続けた。

 

選手のケガについて西武での教訓

 石毛氏は西武時代に監督や管理部長だった根本陸夫氏から、「選手は五体満足で国に返すな」と話していたという。ケガもなくプロ野球を引退してしまうと、下手をすると周囲の人々は、プロ野球で通用する能力が足りなかったと思ってしまうかもしれない。また選手もやり切ったを思えないだろう。肩は消耗品とという言葉を聞くが、「じゃあこのままで、プロ野球を引退してもいいの?」と石毛氏は考える。

 西武時代に「練習やプレーをやり切る事」を教わり、福岡ソフトバンクの秋山幸二前監督は選手に球数のノルマを課したりもしていた。工藤監督も若手やベテランを区別せずに選手に課題を与えたり、ケガについての考え方も選手に伝えた。

 西武時代に培った、「選手の成長や故障」について、自らの信念を貫いた工藤監督の「完勝」の1年間だった。

(記事:Professional-view Baseball 柄井)

 

関連記事

記者会見

【ドラフト会議特集9】ドラフト会議を10倍楽しくするためのテレビ番組

 10月23日に行われるドラフト会議まであと1週間を切った。今年のドラフト会議を楽しむためにも、今週

記事を読む

石毛宏典

ドラフト注目選手を、石毛宏典氏、日野茂氏が斬る 第1回「オコエ瑠偉選手・関東第一」

 プロ野球ドラフト会議が10月22日に迫ってきた。様々なメディアで注目選手が取り上げられているが、元

記事を読む

draft_box

この12人はなぜドラフト1位指名されたのか

以前の記事「ドラフト1位候補の12人を石毛宏典氏、日野茂氏とチェック」にて、ドラフト1位指名されそう

記事を読む

notes

プロ野球の世界で生き残るために必要な事

 プロ野球では12球団の新人選手発表が滞りなく行われ、ほぼすべてのイベントは終了した。そして新人は年

記事を読む

12球団エース

エースの系譜はあるのか?

プロ野球にもアマチュアの野球チームにも、エースという投手の存在がいるとチームが高いレベルで安定すると

記事を読む

fukuoka

福岡ソフトバンクの2015年のチーム構成

 昨年日本一となった福岡ソフトバンクは2015年をどのように戦おうとしているのか、チーム構成を見てみ

記事を読む

kyujyou2

プロ野球選手のセカンドキャリア

日本野球機構は昨年限りで戦力外通告を受けた選手と、現役を引退した選手合計101人の進路調査結果を公表

記事を読む

nagoya

12球団の開幕前の想定と開幕してから ~セリーグ編~

 プロ野球も開幕して2週間が過ぎ、対戦カードも一巡した。各球団とも開幕前に想定した力が出せているチー

記事を読む

新芽

野球のトレンドは小柄でも飛ばせる選手、投げられる選手に?

 プロ野球は、だいたい180cm80kgくらいの選手がプレーしていて、近くで見ると大きく感じるという

記事を読む

yokohama

グリエル選手デビューは、ここが凄かった!

 キューバの至宝、グリエル選手が横浜DeNAの一員として日本プロ野球界にデビューしました。打っては4

記事を読む



  • 解説者:日野茂氏(元横浜ベイスターズヘッドコーチ)


    解説者:石毛宏典氏(元西武ライオンズチームリーダー、オリックスブルーウェーブ監督、四国アイランドリーグ創立者)

    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」
    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」


    取材協力:元プロ野球選手が教える野球塾
    「ZEROベースボールアカデミー」
ishige2
盗塁:バッテリーとランナーの3.3秒の攻防

盗塁は、日本の野球に置いて、チャンスを広げ、得点を挙げるために重視され

石毛宏典
大谷翔平選手はメジャーで二刀流で活躍できるか、石毛宏典氏に聞く

いよいよ大谷翔平選手が、メジャーに移籍した。アナハイムエンゼルスで今季

draft_box
この12人はなぜドラフト1位指名されたのか

以前の記事「ドラフト1位候補の12人を石毛宏典氏、日野茂氏とチェック」

石毛宏典
選手は最終的には態度で評価される

プロ野球に限らず、高校野球、大学野球などの選手は、素晴らしいバッティン

石毛宏典
エラーをしてしまったら、エラーをした選手がいたら

野球をしていて、エラーはミスはつきものです。どんな選手でも1回はエラー

→もっと見る

PAGE TOP ↑