*

スカウトの目は様々なものに影響される

公開日: : スカウト活動

 元プロ野球スカウトの日野茂氏は、選手時代は内野手としてプレーしていた。プロ野球のコーチ時代も守備などをベースに野手を育ててきている。しかし、ある年にドラフト上位で入ってきた投手をキャンプ最初のブルペンで見た所、愕然としたという。

一目見て「通用しない」

 その投手は大型の左腕投手で、大学野球界では得意のチェンジアップやカーブで三振を奪い、安定したピッチングが評価されていた。何より貴重な長身左腕投手という事で、当時の報道でも大学屈指の左腕投手として報道されており、当時は数人は自由に契約ができる制度でその選手を獲得した。

 そして翌年、キャンプに入ると、新人となったその投手がブルペンに入る。そして投げた変化球を見て日野氏は、「この変化球は使えないよ?」と担当したスカウトに話したという。即戦力として期待された投手だったが、その後、1軍で目立った活躍は見られなかった。大型左腕という事もあり、また高く評価されてプロ入りした投手だったので、他球団に移るなどしてある程度の年数はプレーしたものの、結局活躍は見せられなかった。

 

スカウトの目

 スカウトの目というのは、いろいろなものに騙される可能性がある。例えば見た試合が好試合で盛り上がった試合だったりそうでなかったり、スカウトの周りで話をする観客や他球団のスカウトの声が聞こえてきたり、または新聞などの報道の情報であったり、または自分の思い入れというものもある。

 特に、周りからの情報には影響される。もちろん自分の目に自信をもってスカウティングをしているのだが、当然人間である。他球団のスカウトが球場で話をしていたり、新聞紙上でコメントをしていた内容に影響されることも少なからずある。日野氏は(今回紹介した選手とは別の)ある選手を獲得したスカウトを、他球団のスカウトが影で笑っていた、という話をしてくれた。スカウト同士もよく顔を合わせて知った仲ではあるが、そこは仕事であり球団の利益を考える。わざと選手を高く評価して他球団のスカウトに伝えてみたりという事もあるという。

 またもう一つは思い入れについて。例えばある投手を見る時、自分と同じタイプの投手だったり、同じタイプで無くても投手出身のスカウトは、投手の目線で選手を見る事になる。しかし野手出身のスカウトは、バッターとして対戦した時に「この変化球は見れる」といった形で見ていくという。今回のケースでも日野氏はバッターの目線で、その投手の変化球が通用しないことを、1年目のキャンプの初ブルペンで判断していた。

 最近では各球団とも複数のスカウトが一人の選手をチェックする体制(クロスチェック)が定着してきたが、ドラフト上位候補を自由に獲得できる制度だった時は、その選手に近かったり信頼の高かったスカウトに任せる事も多かったのだろう。スカウティングよりも評価の高い選手をいかに獲得するかに力が入れられていたといえる。その制度の元ではそれも仕方なかったかもしれないのだが、その選手にとっては良い事だったのだろうか。

 話がそれたが、まずスカウトは情報を遮断して自分の目を信じる事が必要で、また一人のスカウトでなく投手出身、野手出身といった様々なタイプのスカウトが多様な視点で選手を見ることがスカウティングの鍵となる。

(記事:Professional-view Baseball 編集部)

関連記事

a1180_000929

ドラフト下位指名選手の活躍、スカウトの喜び

 昨日の中日と横浜DeNAの試合で、中日のドラフト7位ルーキー・遠藤一星選手が勝ち越しのヒットを放ち

記事を読む

日野さん

野手のドラフト候補がスカウトに注目されるには

 センバツに出場する野手の候補を紹介してきたが、元西武のスカウト・日野茂氏に、「野手はどんな風にすれ

記事を読む

508287p8i5842of

プロ野球スカウトの面白さ ~今のスカウトの仕事~

 プロ野球スカウト、その面白さについて元西武スカウトの日野氏にお話を聞いた。今回は後編として現在のス

記事を読む

プロ志望届例(栃木県高校野球連盟ホームページより取得)

高校生のスカウト活動は最終段階へ、プロ志望届からドラフト会議まで

 夏の高校野球大会が、甲子園で熱戦が繰り広げられています。1回戦と2回戦までの代表49校すべてが登場

記事を読む

日野さん

ドラフトの注目遊撃手、中京学院大・吉川尚輝選手を元スカウトが分析する

今年のドラフト会議で、注目されている大学生がいる。中京学院大の吉川尚輝選手は、プロのスカウトがドラフ

記事を読む

野球キャンプイン

1月、2月のスカウトの動き

プロ野球は2月1日に春季キャンプが始まり「球春到来」となる。この時期はアマチュア野球の高校野球、大学

記事を読む

sendai

プロ野球のスカウティングは「営業」か「投資」か

 ローソンの社長を務めた新浪氏が10月からサントリーホールディングスの社長に就任する。近年は新卒学生

記事を読む

kyujyou

【ドラフト会議特集5】スカウトの1年

 10月23日のドラフト会議まであと2週間と少し、各地で大学のリーグ戦が終盤戦の盛り上がりを見せてい

記事を読む

batter

背の低い選手に注目する

 野球はバレーボールやバスケットのように身長が高い必要はない。サッカーに比べても頭上のプレーが多いわ

記事を読む

kyujyou3

夏の高校野球、プロのスカウトは何を見ているのか?

 季節は7月、暑い季節となりました。そして熱い高校球児の戦いが各地で行われています。新聞でも注目の球

記事を読む



  • 解説者:日野茂氏(元横浜ベイスターズヘッドコーチ)


    解説者:石毛宏典氏(元西武ライオンズチームリーダー、オリックスブルーウェーブ監督、四国アイランドリーグ創立者)

    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」
    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」


    取材協力:元プロ野球選手が教える野球塾
    「ZEROベースボールアカデミー」
ishige2
盗塁:バッテリーとランナーの3.3秒の攻防

盗塁は、日本の野球に置いて、チャンスを広げ、得点を挙げるために重視され

石毛宏典
大谷翔平選手はメジャーで二刀流で活躍できるか、石毛宏典氏に聞く

いよいよ大谷翔平選手が、メジャーに移籍した。アナハイムエンゼルスで今季

draft_box
この12人はなぜドラフト1位指名されたのか

以前の記事「ドラフト1位候補の12人を石毛宏典氏、日野茂氏とチェック」

石毛宏典
選手は最終的には態度で評価される

プロ野球に限らず、高校野球、大学野球などの選手は、素晴らしいバッティン

石毛宏典
エラーをしてしまったら、エラーをした選手がいたら

野球をしていて、エラーはミスはつきものです。どんな選手でも1回はエラー

→もっと見る

PAGE TOP ↑