*

インコースを投げる投手vs打者の戦いは、日本の野球の将来を左右する

公開日: : 高校野球

 春季高校野球関東大会では浦和学院が優勝を果たした。優勝の立役者となったのは、左投手の江口奨理投手と小倉匡祐投手、二人とも球速は120キロ台がほとんどだが、バッターのインコースにキッチリと投げられる投手だ。実はこの優勝は、日本の野球界の将来を表すものかもしれない。

高校野球で活躍する投手

 高校野球では松坂大輔投手や田中将大投手、藤浪晋太郎投手といった、150キロの球を投げ、変化球の切れも良く、しかも「ある程度のコントロール」ができる投手が時折出現し、その力で甲子園でも優勝を果し、怪物投手と呼ばれてきた。しかしもちろんそんな選手はなかなか現れない。

 そして最近、甲子園で結果を残す投手として、打者のインコースにキッチリと投げる事ができる投手が挙げられる。2013年にセンバツで優勝した浦和学院の小島和哉投手、2014年センバツ優勝の龍谷大平安・高橋奎二投手、2014年夏の大阪桐蔭・福島孝輔投手、そして2015年センバツの東海大四・大沢志意也投手や浦和学院の江口奨理投手など。

 「球速が遅くてもキッチリとインコースに投げることができれば、高校生の名門と呼ばれるチームでもなかなか打てない」と、元西武スカウトの日野茂氏はいう。そして、大阪桐蔭や浦和学院などは、球のスピードが遅くてもコントロールや度胸のある投手を重用し、インコースに投げる練習をしているという話も聞く。

 

プロでは通用しなくなる、アマチュアの好投手

 そういう選手が活躍することは、素晴らしい事だと思う。しかし、そういう投手を起用しているチームが勝ち続けることで、他の高校もそれに倣って、球の速いコントロールがアバウトな投手よりも、球が遅くてもコントロールの良い投手を起用する。すると、試合で活躍し、経験を積むのはそういう投手が増え、球の速い選手の登板機会は減っていく。そして少年野球でも、球速よりもコントロールを重視していくという流れができていくとする。

 そしてそういう投手は大学においてもすぐに活躍できたりする。チームの勝利のために重用される。その結果、球が130キロ中盤のコントロールの良い投手がたくさん出てくることになる。

 日野氏はそういう投手について「プロでは通用しなくなる」と話す。高校や大学レベルでは打者は体もできていないし、しっかりとしたスイングもなかなかできていない。しかしプロに入ると、体が出来上がりスイングの強さが増す。そうすると130キロ中盤のインコースの球は通用しなくなる。

 

日本の野球の将来を

 日本の野球の将来を考えると、高校や大学、少年野球も含めて、コントロールが悪くても球はめちゃめちゃ速いという投手も、起用して経験を積ませて欲しいと思う。もちろん勝利が大切なのはわかるが。

 また、高校、大学のバッターについても、インコースを怖がらずに強くスイングできる選手を育ててほしい。そういうバッターが増える事で、投手のレベルも一段落上に上がる。

 日本は少子化がこれからも進む。大勢の選手の中から選んで起用する時代から、選手を育てて起用する時代になる。その中で、130キロそこそこのインコースピッチャーは、ますます重用されると思う。その投手をバッターが打ち崩せるかどうかで、日本野球のレベルが維持できるかどうかにつながるのだと思う。

(記事:Professional-view Baseball 編集部)

関連記事

Koushien

甲子園でホームランを打つのは5000人に1人の奇跡

 夏の高校野球、今大会は既に10号ホームランが出ている。甲子園でホームランを打つ事ができるのは、全国

記事を読む

Koushien

選抜高校野球、注目候補の活躍はあまり見られず

 選抜高校野球大会の1回戦が、最後の登場となる東海大四vs豊橋工の試合ですべて終わった。出場32校す

記事を読む

Koushien

夏の高校野球、2011年からの選手宣誓の内容と宣誓をした主将たち

 いよいよ夏の高校野球、甲子園大会が開幕しました。今年は作新学院主将・中村幸一郎選手による選手宣誓が

記事を読む

Koushien

横浜高校の渡辺監督が勇退、約半世紀の監督人生

 横浜高校の渡辺監督が今年限りで勇退するという報道がされた。70歳、昨年、同校の小倉部長が勇退したが

記事を読む

Koushien

高校野球100年、審判員も100年

 100年目の高校野球大会が開幕した。第一回全国中等学校優勝野球大会は1915年8月19日~23日に

記事を読む

Koushien

石毛宏典氏の高校野球への提言

8月が終わり、高校野球は新チームの戦いが始まっている。この夏も各地で、甲子園で多くの選手がプレーした

記事を読む

ouen1

高校野球の応援曲のルーツ~第1回:東京六大学~

 高校野球のスタンドでの応援は、高校野球の花の一つである。この応援によってチームに勢いがつく。また野

記事を読む

ouen1

高校野球の応援曲のルーツ~第3回:プロレス~

高校野球応援特集、第3回です。  第1回は東京六大学がルーツのもの、第2回は甲子園常連校がルーツの

記事を読む

Koushien

センバツで躍動するか、期待の大型遊撃手たち

センバツ高校野球大会の組み合わせ抽選が、今週の金曜日に迫った。左腕投手に注目が集まる中で、大型遊撃手

記事を読む

kyujyou1

高校野球のベスト8と地域の差

 今年の夏の高校野球選手権、北信越地区や東北地区の活躍が目立った。しかしベスト8には実力のある東海、

記事を読む



  • 解説者:日野茂氏(元横浜ベイスターズヘッドコーチ)


    解説者:石毛宏典氏(元西武ライオンズチームリーダー、オリックスブルーウェーブ監督、四国アイランドリーグ創立者)

    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」
    石毛宏典オフィシャルブログ「石毛漢動」


    取材協力:元プロ野球選手が教える野球塾
    「ZEROベースボールアカデミー」
石毛宏典
石毛宏典氏は中村奨成選手を絶賛、プロもマネをするべき打撃

石毛宏典氏は今年の夏の甲子園で、久々に注目したバッターがいたと話した。

石毛宏典
石毛宏典氏が源田壮亮選手を絶賛

 社会人から西武ライオンズ入りし、1年目から遊撃手として活躍をした石毛

石毛宏典
東北楽天の快進撃と千葉ロッテの低迷を分析する

2017年のパリーグは、5月10日終了時で東北楽天が貯金12をもって首

石毛宏典
レギュラー争いと選手の成長

プロ野球では、同じポジションに複数の選手がいる。チームの各ポジションで

石毛宏典
今年の西武ライオンズは行ける?石毛宏典氏に聞く

4月18日時点で7勝6敗、3位の位置にいる埼玉西武ライオンズ、辻監督に

→もっと見る

PAGE TOP ↑