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羽生結弦選手のアクシデントと野球選手について

公開日: : その他

 フィギュアスケートのグランプリシリーズ中国大会で、演技前に他の選手と衝突してけがをしながらも、本番の演技に挑んで見事2位となった羽生結弦選手、その頑張りに感動して称賛の声が上がるとともに、将来を考えて出るべきでなかったという意見が出ている。このアクシデントとその後の反応を見ると、甲子園でボロボロになっても投げ続ける高校生投手に似ていると感じた。

故障をする野球の投手たち

 アクシデントと野球の話を結び付けてしまい申し訳ないのですが、それでもやはり今年のドラフト候補選手のことを思い浮かべました。高校生で言えば東北楽天がドラフト1位指名した安楽智大投手は、昨年の選抜大会で決勝まで772球を投げた。甲子園で156キロを記録し準優勝を果たしてヒーローとなったのだが、その後、それを越すような活躍はできておらず、今の所はそこがピークとなっているように感じる。

 そのセンバツでベスト4まで勝ち上がった佐野日大の田島大樹投手も、その後にひじの違和感などにより、プロ野球をあきらめ社会人の進む選択をしている。前橋育英の高橋光成投手も昨年の夏の甲子園で熱い中を投げ切って優勝し、18U日本代表にも選ばれた後の秋季大会は疲労により初戦で敗退、3年生となった今年は、あの夏のようなピッチングは出来ていなかった。

 高校生だけではない。大学生でも例えば福岡ソフトバンクにドラフト5位で指名された島袋洋奨投手は、2年生の春に延長15回226球を一人で投げるなど奮闘したがその後に故障で離脱をし、早稲田大の吉永健太朗投手も日大三で全国制覇とした後、大学でも1年春に4勝0敗でMVPを獲得する大活躍を見せ、大学野球選手権でも優勝に大きく貢献したが、その後は調子を崩してしまっている。

 その時は、リーグ戦で連投も辞さずに、150球を超えても投げ続けてヒーローになる。しかし、その代償は小さくはない。

 

羽生選手を見習うべきか

 羽生選手の挑戦は確かに感動を与えた。そしてプロ野球界でも東北楽天の大久保監督が「あれが勝負できる男の姿。」「見習わないといけない」と話したという事が話題となっている。この言葉をどんな状況で言ったのかはわからないので、報道を100%真に受けるのは良くない。

 ではあの姿勢を見習うべきか、その必要はない。おそらくほぼすべてのスポーツ選手が、ああいう場面では「出る」という気持ちを既に持っていると思うから。一瞬の痛さよりも毎日毎日辛い練習に耐え、その成果を一瞬の場面にぶつけるのがスポーツ選手なのだから。

 では羽生選手のようにケガを負いながらも出場するのは良くないことか? それは選手や状況による。

 落合監督は中日時代に、ケガの可能性を指摘していたにもかかわらずに防具をつけずに打席に立って、自打球で骨折をした和田選手に対して「退いてもいいけど他の選手がいるぞ」というような態度をとり、和田選手が自分の意思で骨折を押して出場したという事があった。例えば自分に甘さが見えたとき、自分が壁に当たっているとき、ここで踏ん張らないと次にプレーする機会がなくなるときには、やる時かもしれない。たとえばトライアウトに挑戦している野球選手、もしここでケガを押して出場しなければもう野球ができなくなるという時はやるべきだとは思う(命にかかわったり、後々大きな後遺症にならないのであればだが)。

 そのような場面を乗り越えて、精神的な強さを得た選手も少なからずいるのだろう。しかし、まだ残された時間が長い選手、体の成長を仕切っていない選手はまだやるべきではないと思う。

 

 その一瞬とその後の数年間を判断することなんてできないだろう。しかしそこに冷静さをもって計算できる力を、本人も選手の周りの人も持っていてほしい。

(記事:Professional-view Baseball 編集部)

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