消えるあいまいなプレーと審判の責任
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プレー解説
野球にかかわらず、柔道やレスリングなどでビデオ判定が導入されるなど、これまで審判によって判断されていたあいまいなプレーが許されない時代となってきた。
野球に関しては、慣例的にアウトにしていたケースなどもある。例えばプロ野球でセカンドで併殺を取るとき、ランナーが完全にアウトの場合などは、捕球時には既にベースから離れているようなケースもあるが、このようなあいまいなプレーも許されなくなるかもしれない。
審判の判断
8月22日、甲子園準々決勝、健大高崎vs大阪桐蔭
この試合の4回裏、2アウト1,3塁の場面、カウント3ボール1ストライクから1塁ランナーがスタートを切ります。バッターが空振りをしてアシストをします。送球はセカンドベースよりややショート側にそれますが、本塁を狙ったランナーを刺すために二塁手がカットに入りました。
その時に二塁手がボールをこぼし、サードランナーがホームインしたところで、審判がバッターの守備妨害としてアウトを宣告します。確かにバッターはスイング後に右足がバッターボックスの外に完全に出ています。このプレーの判定に対しては賛否が巻き起こります。
元プロ野球で内野手をしていた日野茂氏はそのプレーについて「誤審」だと判断しました。その理由として、「キャッチャーの送球がそれているわけではなく、セカンドの落球によるもの」と説明しました。
また、「バッターの動きは許容範囲」という話もありました。
公認野球規則の6.06には、バッターの反則行為として次のように記述してあります。
「バッターがバッターボックスの外に出るか、あるいは何らかの動作によって本塁でのキャッチャーのプレイ及びキャッチャーの守備または送球を妨害した場合。」
今回はバッターの足がバッターボックスの外に出ていたので、ルールからいうとバッターの反則行為ということになります。ただし、プロ野球では、盗塁をアシストするときの打者の動きでこのようなプレーはかなりあります。時折、守備妨害を取られるケースもありますが、非常にあいまいとなっています。
このプレーがの論点は、バッターの足が出ていたかどうかよりも、セカンドが落球したのがこの行為によるものなのかどうかとなりそうですが、非常に微妙だと言えます。
9月2日、阪神vs横浜DeNA戦
2-3とリードされていた9回、阪神は1アウト満塁の場面で今成選手の打球はレフト前に落ちます。サードランナーは楽々ホームインでしたが、レフトからの送球はセカンドランナーがホームインする前に黒羽根選手が捕球をしていました。
タイミングは完全にアウトでしたが、審判はセーフの判定、テレビ中継のスロービデオでは、黒羽根選手がブロックをせず、スライディングしたマートン選手の足がタッチよりも先に入っているようにも見えます。
しかしプロ野球では、故障を避けるためにいわゆる「死に体」のような形でアウトになるケースがあります。黒羽根選手は自分やマートン選手が故障しないようにプレーをしましたが、審判は足とタッチの微妙な差を見てセーフと判断しました。
このプレーは、悠々アウトの「死に体」なのか、ギリギリのプレーなのかという所で選手と審判の判断が割れたようです。そうなるとこの判定は、審判側が積み重ねたあいまいさによって発生したプレーだとも言えます。
メジャーリーグでは
メジャーリーグでも、ファーストベースを回った際に転倒して足を痛め、ファーストベースに戻ろうとした選手が、いわゆる片足でケンケンで戻っていた時、ベース上で丁度飛んでいた時にタッチをされました。審判はアウトを宣告しませんでしたが、ビデオ判定の結果アウトとなりました。
これまでならば、仕方ないとされていたあいまいなプレーが、ビデオ判定の前では有無を言わさずにアウトとなります。
消えるあいまいなプレー、そしてビデオ安定へ
慣例とされていた判定はこれからは許されなくなります。日本でもベース上のプレーでビデオ判定の導入が行われるかもしれませんし、今でも、映像技術が発達して、テレビ中継では正確なプレーが視聴者の前に映し出されます。
これからはすべてのプレーに対して、捕球時にベースにちゃんとついているか、ベースタッチとランナーへのタッチはどちらが先か、盗塁のアシストの時にバッターボックスから完全に足が出ていないかなど、キッチリとしたプレーが要求されるようになりそうです。
そしてそれは審判にも責任が発生します。「このケースでは楽々アウトなので慣例でアウト」という判定をしていると、横浜DeNAの黒羽根選手のような判断ミスが起こるので、どんなプレーでも常にキッチリした判断をしなければなりません。
ただし、それには人の目では追いつかなくなっていく事になるでしょう。キッチリとした判定が要求されると、これからはビデオ判定が主になっていくかもしれません。しかしそれが野球を面白くする事につながるのかは分かりませんが。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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