高校野球は変われるか?
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高校野球
高校野球はヒーローを生み出す場にもなる。それは甲子園で優勝した選手だけでなく、懸命にプレーしながら敗れ去った選手も含めて。時には悲劇的な敗者もヒーローになることがある。
炎暑の中で連投し、それでも懸命にプレーし続ける選手たち。栄冠やヒーロー性は、その過酷さによる悲壮感とリンクしている雰囲気も感じられる。
投手の球数
2012年の夏の甲子園大会、2年生だった松井裕樹投手は甲子園で1試合22奪三振を記録し、一気にヒーローとなった。そして準々決勝まで勝ち上がったものの光星学院に敗れ、号泣する姿とともにヒーローとして心に残っている。その松井投手は炎天の中で4試合で577球を投げている。19日に142球、20日に154球と連投している。
その年優勝した大阪桐蔭の藤浪晋太郎投手、控え投手も充実している大阪桐蔭ではあるが、4試合に登板し516球を投げている。こちらも22日に133球を投げ23日の決勝でも127球を投げている。
そして2013年選抜、済美の安楽智大投手は5試合に登板し772球を投げた。2013年夏の前橋育英・高橋光成投手は6試合に登板し5試合に完投、合計687球を投げている。
気持ちと体と
選手は疲れが残っていても、肩が腫れていても、甲子園の優勝のために「投げたい」という。そして試合では限界を迎えても、気力を振り絞って投げる。その姿を見て観客は感動をし応援をする。
体力がない中で投げると、腕が下がったりといつもと同じ自分のフォームで投げることは難しくなる。その中で投げ続けるとフォームを崩す。下手をすればそのフォームを取り戻すのに長い期間を要する。
また肩が腫れている状態で投げ続け肩を壊す事もある。藤浪晋太郎投手、松井裕樹投手はケガなどの話は聞かないが、安楽智大投手は肩を痛め、高橋光成投手は骨折のケガもあったものの自分のフォームを取り戻すのに約1年間を費やしている。
目前の夢と将来の夢
目前の夢として少年時代からあこがれてきた甲子園での優勝がある。そして将来の夢としてプロ野球、メジャーリーグという最高峰の舞台がある。
高校生はまずは甲子園しか見えなくなり、そのためならば何をしても良いと思ったりする。そこで将来の夢のことも考えてあげるのが、回りの大人の役目になる。高校生の夢に周りの大人が相乗りしてしまってはいけない。
それは監督や関係者だけでなく、高校野球連盟などの関係者にも言える。高校野球の人気を持続するためなど連盟の都合で選手に連投の可能性のある日程を組み、そして高校に連投をさせないように指導してもそれは無理である。
大人ができる事
周りの大人ができる事は、まず選手の連投の負担が減る日程を組むことだろう。たしかに甲子園大会開催中にちょくちょくと休日が入ると、盛り上がりが欠けていくかもしれない。またはNHKの放送がやりづらくなったり、球場を借りるコストが増えるかもしれない。
それでもせめて中3日程度の間隔を空けられるような日程を組むことはできないだろうか。
甲子園大会が無理でも、夏の都道府県大会ならばできるだろう。最近は決勝、準決勝などの間に1日程度間を明ける日程になっているが、それならば、決勝、準決勝、 準々決勝は中3日、4日を明けても良いのではないだろうか。
球児の「将来の夢」を考えて、高校野球は変われるか。
(記事:Professional-view Baseball 編集部)
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