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プロ野球の育成制度と人口減少社会

公開日: : 野球の制度

 6月22日、横浜DeNAの萬谷康平投手がプロ1勝を挙げた。これはただの1勝ではなく、育成選手選択会議(育成ドラフト)で指名された投手の中で、最も早いプロ初勝利となった。育成ドラフトについて考えてみる。

 

育成ドラフト制度

 育成ドラフトは2005年から行われているもので、育成選手制度の誕生とともに導入された制度です。

 プロ野球は70人の支配下登録枠があり、基本的にそれ以上の選手を保有することはできませんでした。1992年までは練習生として、公式戦には参加できないもののチームのユニフォームを着て練習に参加できる制度がありました。しかし、ドラフト制度の抜け穴に利用されたため、廃止なりました。

 それ以降は支配下登録選手以外の選手の保有は認められていませんでしたが、Jリーグの開幕や不況のあおりから野球選手の受け皿となっていた社会人野球のチームが減少したことから、選手の育成や市場規模の維持(拡大)が必要という意見が出て、2005年に育成選手制度が誕生しました。

 育成選手は、新人選手は育成ドラフトで指名することで、またプロ野球を経験している選手についても育成選手として契約することができます。新人選手には支度金として標準的に300万円が支払われ、年俸も240万円以上という条件があります。

 

萬谷投手が夢をつかむ

 萬谷投手は早くからプロ野球をめざし、阪南大学からシティライト岡山に進み、社会人野球でプレーしていましたが。しかしそこを1年間で辞めクラブチームのミキハウスREDSに移籍します。この移籍が2つの幸運をもたらします。

 一つはそこに元福岡ダイエーや千葉ロッテでプレーしていた山田秋親投手が在籍しており、プロの投手を近くで見られたことやアドバイスをもらえたこと、そしてもう一つはクラブチームだったからということです。

 育成選手制度は「選手を育成する」という理念があり、社会人野球の選手については日本野球連盟より「指名するならば支配下選手として指名すべき」という申し入れがあります。そのため社会人選手を育成ドラフトで指名することは基本的には難しい(指名を予定していたが申し入れにより回避した球団もあれば、その後に指名した球団もあります)状況になっています。

 そのため、もし萬谷選手がシティライト岡山でプレーを続けていたら、育成ドラフトでは指名は難しく、本ドラフトで指名されたかどうかは分かりません。クラブチームだったからこそ、育成ドラフト2位で指名を受けることができたと思われます。

 そして入団1年目の4月27日に早くも支配下登録されると、5月には1軍で登板しました。そして6月22日、プロ初勝利を挙げました。

 

良い面と良くない面

 育成ドラフトはこのようにプロ野球入りを夢見ながら、ドラフト会議で指名されないような選手に夢を与えることができました。プロ野球側も育成選手から、1軍で活躍する選手が登場し、活性化につながっています。

 しかし、元横浜ベイスターズでヘッドコーチをしていた日野茂氏は、育成ドラフトに苦言を呈します。

 「アマチュア選手にプロ野球への夢を広げる制度ではあるが、支度金だったり年俸が低かったりと、今の社会を反映しているように見える」

 不況が続いた日本では、正社員の雇用から契約、派遣といった形で、企業が安い賃金で労働者を雇用するような動きがありました。育成ドラフトも味方によっては、安い費用で選手を確保し、安い年俸で保有する制度でもあります。

 育成選手制度の導入の際、70人の保有枠の撤廃という議論もありましたが、金銭的に体力のある球団とそうでない球団の戦力差が大きくなるという意見があり、これが見送られています。12球団のうち黒字球団は少ない現状において設けられた制度ということが言えます。

 

制度で守ること

 このように「プロ球団側の資金的体力」と「アマチュア選手の夢」から、今の所は制度も安定稼働しており良い面が見られています。

しかし、この制度に守られて安住するのは良くないと考えます。基本的には球団側がもっとプロ野球市場を大きくする努力をし、支配下登録選手の枠を拡大することでさらにプロ野球の市場を大きくする、ということが目標でしょう。

 日本社会はこれから少子化が進み人口も減少します。その中で野球の市場を拡大するのは難しいでしょうが、メジャーリーグを見ると余地はまだまだあると思われます。

 今のまま、制度によって球団側の利益を守ることが続けるのなら、野球市場の縮小のスピードは早いのではないかと思います。

 

(記事:Professional-view Baseball 編集部)

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